個人情報保護法改正③

今回も、前回の個人情報保護法改正の続きです。最終回になります。
あくまで条文を読んだ際のメモを元に、急ぎ作成しているものであることはご理解ください。

改正案の概要(再掲)

改正案の概要を再度掲載しておきます。今回は、残りの不適正利用等の防止と規律遵守の実効性確保に関する定めを概観します。

  • 適正なデータ利活用の推進
  • AI開発を含む統計情報等の作成のみに利用される場合、一定の要配慮個人情報の取得・個人情報の第三者提供に関して本人同意が不要となります。
  • 目的外利用・要配慮個人情報取得・第三者提供に関し、本人の権利利益を害さないことが明らかな取扱いの場合は、本人の同意が不要となります。
  • リスクに適切に対応した規律
  • 16歳未満の本人である場合、同意取得や通知等について法定代理人を対象とすることを明文化し、未成年者本人の最善の利益を優先して考慮する旨の責務規定が設けられます。
  • 顔特徴データ等にの取扱いにおいて、一定事項の周知が義務化されます。
  • データ処理等の委託を受けた事業者について、個人データ等の適正な取扱いに係る義務が見直されます。
  • 本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合、個人情報の漏えい等発生時の本人への通知義務が緩和されます。
  • 不適正利用等の防止
  • 個人情報でないが、特定の個人へ働きかけが可能となる情報の不適正利用等が禁止されます。
  • 規律遵守の実効性確保
  • 違反行為の是正に係る命令の要件が見直されます。また、本人への通知・公表等の必要な措置をとるよう勧告・命令することが可能となります。
  • 重大な違反行為に対する課徴金納付命令の制度が設けられます。

不適正利用等の防止

オプトアウト制度に関して、提供元が提供先の身元及び利用目的を確認するという義務が加重されています(改正個情法27条7項)。今回は、もう1つの連絡可能個人関連情報に関する規律を見ていきます。

連絡可能個人関連情報の不適正利用及び不正取得の禁止

改正個情法31条の2が定めます。同条の定め自体はシンプルで、1項において、「違法または不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法」による連絡可能個人関連情報の利用を禁止します。また、2項において、「偽りその他不正の手段」による連絡可能個人関連情報の取得を禁止します。
これらの不適正利用と不正取得の文言は、個人情報の利用・取得に関して同じものが使われています(個情法19条・20条1項)。したがって、対象が個人情報か、連絡可能個人関連情報かの違いはあれど、行為態様自体は現行法の解釈が援用されるものと想定されます(後掲のリンク参照)。

問題は、「連絡可能個人関連情報」とは何かです。

「連絡可能個人関連情報」とは?

細かい点を除けば、以下を満たすものが、連絡可能個人関連情報です。

  • 個人関連情報であること
  • ②住居等の所在地(1号)、電話番号(2号)、電子メールアドレス(3号)、SNS等の連絡先に使用できるID(4号)又は個人情報保護委員会の規則で定める似たような連絡先(5号)のいずれかを含むこと

個人関連情報とは、ガイドラインで次のような具体例が挙げられているとおり、「誰か個人の情報であるが、その情報からは具体的な人物の情報だと認められないようなもの」です(個情法2条7項)。なお、これらの情報であっても、情報が蓄積されると具体的な人物の情報だと識別可能になるため、個人情報となり、個人関連情報ではなくなります。

  • Cookie等の端末識別子を通じて収集された、ある個人のウェブサイトの閲覧履歴
  • メールアドレスに結び付いた、ある個人の年齢・性別・家族構成等
  • ある個人の商品購買履歴・サービス利用履歴
  • ある個人の位置情報
  • ある個人の興味・関心を示す情報

そして、連絡可能個人関連情報は、「誰か個人の情報であり、具体的な人物の情報とまでいえないが、その情報を用いて個人に連絡ができてしまうもの」といえます。連絡可能である以上、プライバシー等の侵害の懸念があり、今般、不適正利用と不正取得の規律対象となりました。

どこの誰のものだか分からない電話番号リストなどを保持し、マーケティング利用をしているような場合などがあればともかく、本改正で違反とされる行為は現時点でも不当とみられる行為と思われます。実務的な影響は軽微ではないかと考えています。

参考:現行法の不適正利用・不正取得の行為態様の解釈

規律遵守の実効性確保の定め

勧告・措置命令

まず、従前では「勧告」と「命令」であっったものが、改正個情法148条では「勧告」と「措置命令」となり、名称が変更となっています。

次に、従前は「当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨」のみが勧告の内容でした。他方、改正個情法では、これに加え、「当該違反行為に係る事実の本人に対する通知若しくは公表その他の個人の権利利益を保護するために必要な措置……をとるべき旨」(従前の命令内容を含めて「是正措置等」と定義)を定めることができるようになっています。

最後に、(措置)命令の要件が緩和されています。従前では、次のような整理となっています。

  • 勧告に従わない+個人の重大な権利利益の侵害が切迫している場合に、勧告に係る措置をとるべきことの命令
  • 一定の違反行為+個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要がある場合に、違反行為の中止などの命令

他方、改正個情法では、次のような整理となっています。

  • 勧告に従わない+個人の重大な権利利益が害されるおそれがある場合に、勧告に係る是正措置等をとるべきことの命令
  • 一定の違反行為+(個人の重大な権利利益を害する事実がある or 個人の重大な権利利益の侵害が切迫している)ため緊急に措置をとる必要がある場合に、是正措置等をとるべきことの命令

以上のとおり、より柔軟な勧告・措置命令が可能となっているのが、今回の改正といえます。

要請

改正個情法148条の2により、実際に違反行為をしている者以外の第三者に対して、違反者へのサービス提供等の必要な措置をとるべき旨を要請できるようになりました。
いわゆる破産者マップ事件(官報に掲載された自己破産者の氏名等を地図上にマッピングして公表した事件)でウェブサイト運営者に対してウェブサイトの停止命令等を出したものの(参考)、これに運営者が従わなかったといった出来事に対処するものです。したがって、破産者マップ事件のような場合に、ウェブサイトのホスティングサービス事業者に、ウェブサイトの公開を停止する措置を要請できるようにしたのが、今般の改正個情法148条の2といえます。

課徴金納付命令

改正個情法148条の3以下により、一定の個情法の違反行為者に対し、当該違反行為又は違反行為をやめることの対価として金銭等を得た場合、当該対価としての金銭等を課徴金の納付を命令することができるようになりました。
課徴金納付命令は、既に独占禁止法や景品表示法に定めがあり、これを真似たような書きぶりとなっています。

次のような内容となっていますが、詳細は今後のガイドライン等を待つことになります。

  • 要件を充足すれば課徴金納付命令が必須となること(非裁量型課徴金納付命令)(148条の3第1項2項の各本文)
    なお、課徴金の額が、売上額等×一定割合として計算される独占禁止法・景品表示法と異なり、対価としての金銭等そのものとなっています。具体としてどのような算定となるかは、今後のガイドライン等を待つことになります。
  • 違反行為で影響を受ける本人の数が1,000人以下である場合や今後個人情報保護委員会の規則で定められる場合など、規模の小さいものは命令の対象外となること(148条の3第1項2項の各ただし書)
  • 対価としての金銭等の額を推計できること(148条の4)
  • 過去に課徴金納付命令を受けた者に対しては課徴金の額が1.5倍となること(148条の5)
  • リニエンシー制度(事前に違反行為を申告することにより課徴金の額が減額される制度)があること(148条の6)

最後に

3回にわたって改正個情法を確認してきました。重要な改正としては、やはり子どもの個人情報の取扱いに関するルールの追加(第2回)です。各事業者のみなさまは、このルールがどの程度厳格になるのかウォッチしながら、施行(公布日から起算して2年以内)に間に合うよう対応することが必要となります。
当事務所でも、改正個情法には興味があり、今後も重要な進展があれば報告差し上げる予定です。

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