利用規約作成時の落とし穴 ~消費者契約法入門~

消費者契約による条項の無効リスク

皆さんがto C向けのビジネスを展開するにあたって、利用規約を作成しなければならないことは、以前【リンク→# ECサイトの規約に何を入れるべきか?簡単なチェックリストを公開します。】説明しました。生じ得るリスクを想定し、適切に作り込んでいたとしても、いざ裁判になった際に、消費者契約法によって、条項が無効にされてしまうリスクがあることをご存知でしょうか。

今回は、事業者において利用規約で「守り」を固めるために知っておくべき、消費者契約法の基本と実務上の注意点を解説します。

対象となる契約=「消費者契約」

消費者契約法による規制を受けるのは、「消費者契約」です。ざっくりとした説明であれば、to C向けの利用規約により締結される契約は消費者契約です。
以下ではより詳細を確認することとします。

「消費者契約」=消費者と事業者の契約

消費者契約は、「消費者と事業者との間で締結される契約」です。そのため、鍵となるのは、「消費者」と「事業者」です。

  • 「事業者」
    まず、会社や組合といった法人・団体は事業者となります。また、個人であっても、事業活動を行っている個人であれば、その事業活動の契約であるという文脈であれば事業者となります。
  • 「消費者」
    事業者に該当しない個人が消費者となります。

そのため、会社が個人向けに提供するサービスの利用規約により締結される契約は、「消費者契約」となります。

無効となるパターン

消費者契約法が契約条項を無効とする代表的なものは、次に掲げるものとなります。たとえ、消費者との間で合意していても、消費者の利益を一方的に害するような条項は、無効となります。

全部免責・(軽過失を除く)一部免責はNG

こちら【リンク→# ECサイトの規約:条項解説(法務担当者向け)】でも概要をしました。あらかじめまとめておくと、下表のような整理となります。

故意重過失軽過失
全部免責無効無効無効
一部免責無効無効有効

全部免責は絶対に無効(8条1項1号3号)

損害賠償責任を全部免責とする条項は、理由を問わず、無効なことに注意が必要です。また、事業者が責任の有無を決定できる条項も、全部免責と実質的に変わらないので、無効です。

故意・重過失がある場合の一部免責は無効(8条1項2号4号)

故意・重過失が原因である損害賠償責任を一部免責とする条項は、、無効なことに注意が必要です。また、事業者が責任の限度を決定できる条項も、一部免責と実質的に変わらないので、無効です。なお、「重過失」とは、ざっくり言えば、酷いミスのことです。もう少し難しく言えば、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態をいいます。

なお、この裏返しとして、軽過失であれば、一部免責の規定は有効となります。ただし、この場合であっても、消費者の利益を一方的に害するような条項は、消費者契約法10条等により無効となり得る点に注意が必要です。なお、「軽過失」とは、重過失でない過失です。

一部免責規定に関するサルベージ条項の禁止(8条3項)

利用規約においては、「関連法令に反しない限りXXが負う損害賠償責任はXX円を限度とする」といった形で一部免責を定める例があります。これは、消費者契約法上無効な定めとなっています。

上記で確認したとおり、一部免責規定は軽過失に限り有効なものとなっています。しかしながら、この例はそのことが明らかではなく、軽過失のみ一部免責がされるという旨を明示せよというのが、サルベージ条項に関する規制となります。

実務的な注意点

おそらく、一般的な免責規定であれば、信頼ある大手企業の利用規約の免責規定を参考にしつつ、まとめの表のとおりとなっているか確認をすれば、よっぽどのことがない限り無効と判断されることはないと考えます。たとえば、私がよく利用する楽天市場の会員規約では、次のような免責規定となっています。

上記の楽天市場の例は、次のとおり、消費者契約法に配慮していることが分かると思います。

  • 全部免責ではないこと
  • 故意・重過失に免責規定が適用されず、軽過失にのみ適用される一部免責規定であること

他方、むしろ実務的によくあるのは、個別の条項で、「XXは、XXすることができます。この場合において、XXは、お客様に対する一切の責任を負いません。」などとして、権利規定とセットで免責規定を定める場合です。裁判例ではありませんが、実際、消費者団体から、このような条項が無効だと申入れを受けるケースが多数存在します。実際は権利規定の要件を充足するならば通常責任を負うことはないと判断されるものとは思われますので、「XXは、XXすることができます。」で留めておくのが安全だと考えます。

上記例でも出てくるような「一切の」「理由の如何を問わず」といったワーディングがあれば、「大丈夫だっけ?」と注意するようにしてください。

高すぎる違約金は無効(9条1項1号)

サービスによっては、キャンセル料を定めるものがあると思います。このように、消費者契約の解除(キャンセル)に伴って決まった額を支払えという定めをする場合、キャンセル料は、キャンセルによって事業者に生ずべき平均的な損害の額に収まっている必要があります。

したがって、キャンセル料を定める場合はエイやと決めるのではなく、きちんと根拠をもって定める必要があることに注意してください。

消費者の利益を一方的に害するような条項は無効(10条)

包括的な定めとして、消費者の利益を一方的に害するような条項は無効だとされています。判断はどうしても個別になりますが、消費者団体が利用規約の適法性を指摘する際によく用いる条項であるので、簡単には理解しておくべきです。

消費者団体の指摘の多くは、「民法のルールにしたがったらXXとなる一方、利用規約はXXであり、不利益の程度が大きい」という構造で行われています。これは、消費者契約法10条の解釈に合致しているものといえます。

あまりにもリスク回避的に、消費者不利な条項ばかり作成していると、後日無効だと判断される可能性が出てきてしまうことには注意してください。10条違反で無効とされる状況を可能な限り回避するためには、①民法のルールを知ること、②他社がどの程度まで消費者の不利益を攻めているのかを知ることが重要です。これは法律の専門家以外では難しいと思いますので、是非当事務所にご相談いただければと思います。

その他

以上がよく問題となる条項ですが、ほかに消費者契約法は次のような条項も無効だとしています。利用規約の文脈では実務上あまり見かけないように思いますが、注意してください。

  • 事業者の債務不履行があるにもかかわらず、消費者の契約解除権を放棄させるもの(事業者が解除権の有無を決定できるものも同様)(8条の2)
  • 消費者が後見開始・保佐開始・補助開始の審判を受けたことのみを理由に事業者による契約解除権が発生するもの(8条の3)
  • 年14.6%の割合を超える遅延損害金(9条1項2号)

おわりに

消費者契約法に関するリスクは、実際に消費者と紛争になるというより、消費者団体から無効の申入れがなされ、ハードな交渉を行うこととなるという方が大きいといえます。年々消費者団体の数も増えてきていますし、消費者保護のトーンも高まってきて消費者庁で毎年のように規制の要否について研究会が開催されています。

「自分たちを守るための利用規約」が無効になってしまっては元も子もありません。貴社のサービスに最適な、バランスが取れた利用規約作りをお手伝いいたしますので、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。

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