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Googleに対する仮処分の際の資格証明書の取扱いについて_20220811版

Google LLCの日本における代表者が登記されています

 たとえばGoogleマップのクチコミ削除や,投稿者への損害賠償請求をする際には,Google LLCを相手方にして裁判所に仮処分を求める必要があります。

 従来,Google LLCは日本に代表者の登記が無かったため,裁判の相手方にするためには,はるばる米国から書類を取得する必要がありました (PDF化されてからはそうでもないのかもしれませんが)

 しかし,ようやく日本でもGoogle LLCの代表者が登記されましたので,今後は,日本におけるGoogle LLCと,グーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社の履歴事項全部証明書をそれぞれ添付した上で,当事者目録の債務者として,


アメリカ合衆国19808デラウェア州ウィルミントン、リトル・フォールズ・ドライブ251
債務者 Google LLC
日本における代表者(送達先)
東京都渋谷区渋谷三丁目21番3号渋谷ストリーム
グーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社
同代表者代表取締役 xx xx


とすれば良いようです。この場合,管轄が日本にある云々の上申は不要になります(東京地裁第9民事部に確認)。

ただし,8月後半に再度Google LLCの登記が変わる予定らしく,その際は出し直しが必要とのことでした。

また,東京以外の裁判所によっては別な運用をされているところもあり,まだ過渡期な印象です。

Google LLCの履歴事項全部証明書を取得する際,登記システムのオンライン検索でヒットしない場合は,法人番号(0110-03-015035)を使うと見つけやすいです。

まとめ

ようやく「ふつう」になりつつあるのかな,という感じです。一部の弁護士さんからのロビー活動(?)が功を奏したのかもしれません。ご尽力いただいた先生方に感謝いたします。

理系弁護士が匿名掲示板の発信者情報開示請求スレ(BitTorrent系)を見て思ったこと(1)

はじめに

BitTorrentはある程度ネットに詳しいユーザーが多いため、ネット上には様々な情報が書かれているようです。私は、匿名掲示板は仕事で見るだけでもう十分な気分なのですが、相談者の方と話をして気になったことがあったため、先日BitTorrent系の関連スレを少し見てみました。すると、過去の相談者の方が変なポイントに妙に拘っていた理由がこういう投稿にあったのかな等、色々思い当たることがありました。依頼者を理解するという意味では、我々も多少は読んでおく方が良いのかも、と思いました。

ただ、裁判で判決まで闘ったようなレアケース以外は通常は示談で終わりますし、示談書には、示談条件等を第三者に口外しないという条項を普通はつけますので、正しい情報を特に匿名掲示板的な場所で見つけるのは難しいと思います。

もちろん情報を集めることは自由ですが、どうせ情報を集めるなら、公開されている裁判例(例えば、先日解説っぽいものを書いた、知財高裁の令和4年4月20日判決(令和3(ネ)10074債務不存在確認(東京地方裁判所 令和2(ワ)1573)))を読む方が、コスパは良いんじゃないかなと思います。もし判決書を見て意味がわからないなら、ネットに書いてあることの真偽も判断出来ない可能性が高いので、弁護士に相談する方が良いかも知れません。

以下では、掲示板を見ていて気になった点についてメモ的に記載します。

クライアントソフトは消してはいけないのか

BitTorrent系のクライアントソフトを消してはいけない、という投稿がありました。投稿者がそう思われた理由はよくわかりませんが、私見ではなるべく早く消した方がいいと思います。

自分で消す分には刑法上の証拠隠滅的な話にはなりませんし、上に挙げた令和3(ネ)10074債務不存在確認事件で知財高裁が挙げた損害額の推定式のパラメータ的にも、早くソフトを消すことにメリットがあるためです。

なお弁護士的には、意見照会書より早くソフトを消すのであれば、証拠化しておきたいとは思います。裁判だけではなく、示談交渉でも有利な材料に使えるかも知れません。

著作権法114条の損害額の推定規定と示談の要否

著作権に限らず、知的財産権全般について損害額の立証が困難とされているため、権利者が被った損害額を別なパラメータで推定する複数の式が法定されています。裁判では、この式のパラメータ部分に、具体的にどんな数字が入るのかを証拠に基づいて争うことが損害論での争点になります。

ということを前提に、どうせ自分の損害額は数万円程度にしか推定されないから、弁護士費用+示談金で数十万円以上を支払うのはムダ、的な投稿を見ました。

金銭的な損得で計算されるのはおかしくないと思うのですが、その際に考えておくべき要素としては、

あたりをどう評価するかだと思います。

我々としては、上記の要素も考慮してご納得いただける場合には、相手方と示談交渉をすすめるようにしています。

なお、示談金額と法定された損害の推定額とは、理論上直接は関係ありません。示談はお互いが納得して手を打つという話ですし、示談は、そもそも損害額を推定するための事実に争いがある状態で進めることが多いです。

もちろん両者の金額が乖離している場合は、減額交渉をすることになる訳ですが、示談する相手方にもメリットがないと示談はできないので、ある程度の幅に入っているなら、金額以外の条件交渉を進める方が特な場合も多いかとは思います。

おわりに

関連スレが多く全く網羅的には確認できていないのですが、取り急ぎ、対応を悩んでおられる方の参考になりそうなことについて記載しました。

よくわからないことがありましたらオンライン無料相談も可能ですので、お問合せください。

当所での簡単なオンライン相談のやり方

はじめに

当所では、西日本を中心に全国の方からオンラインでの相談をお受けしており、多数のケースで受任から紛争解決に至ております。

しかし、依頼者の方に事件の見通し等について十分なご説明をするためには、顔が見えるビデオ会議的な仕組みが必要となります。

普段からZoomやTeamsなどでオンライン会議をされている方は問題がないのですが、そうでない方の場合、なかなか相談するにも敷居が高いとお感じになられている事も多いかと思います。

とはいえ、実はZoom等のIDを作成したり、特別なアプリなど準備したりすることなく、簡単にビデオ会議上でオンライン相談が可能な場合もあります。そこで、以下では、ZoomやTeamsを使っておられない方向けに、環境別にオンライン相談までの手順を整理します。

カメラ付きのパソコンがある場合

カメラ付きのパソコンがある場合は、簡単です。当所から、オンライン相談用のURLをメールでお送りしますので、お時間になったらそちらをクリックしていただき、ゲストとしてZoomの会議に参加してください。

ソフトウェアのインストールや、ZoomのIDの作成など、面倒な準備は不要です。

iPhoneがある場合

特別な準備は不要です。iPhoneの電話番号を教えていただければ、当所からいわゆるテレビ電話をかけさせていただきます。

iPhoneを使用中の場合、何もしなくてもApple純正のテレビ電話(FaceTime)が使えるはずですので、ソフトウェアのインストールは不要ですし、IDの作成等も不要です。

iPhone以外のスマートフォン、または、タブレットがある場合

当所から、オンライン相談用のURLをメールでお送りします。 予約時間の少し(15分ほど)前にそちらをクリックしていただき、「ゲスト」としてZoomの会議に参加してください。

ここで、もしお使いのスマホかタブレットにZoomアプリが無ければ、ダウンロードしてインストールするよう促されると思いますので、インストールしてください。 一方、Zoomが入っていれば、そのままお時間までお待ちください。

いずれにしても、ZoomのIDを作成する必要はありません。

まとめ

以上ご説明したように、スマホさえあればオンライン相談は難しくありません。

なお、これまでの経験上は、パソコン+カメラを使っていただく方が、資料や画面を共有したときに見やすかったり、場合によっては電子署名で契約書を作れるなど便利なことが多いです。可能であればパソコンを使っていただくことをお勧めいたします。

知財高裁の裁判例(令和3年(ネ)第10074号)から考える、BitTorrentによる著作権侵害についての侵害者側の対応

はじめに

BitTorrentにより有料動画を共有したとして、著作権侵害を理由に動画の制作会社から発信者情報開示請求を受けたBitTorrentユーザ(X1〜X11)が「原告」として、著作権者である制作会社に対して、「損害賠償債務が存在しない」ことの確認を求めていた裁判について、令和4年4月20日に判決の言い渡しがありました。

この事件、最初は東京地裁に令和2年(ワ)第1573号として係属し、簡単に言えば、原告(BitTorrentユーザ)のうち、X5とX11の二人については原告の勝ち、それ以外の原告については負け、という形で令和3年8月に判決の言い渡しがあったものです。

その後、X2以外の原告と、被告(動画制作会社)が控訴し、その判決が出たことになります。知財高裁の判断内容としては、技術的な観点からの表現の修正や、理由の補足がなされ、また著作権侵害の責任を負うべき期間が短縮されるなどしたものの、大筋としては東京地裁の判断が維持された(一審原告であるBitTorrentユーザのうち、X5とX11以外は負け)と言えるかと思います。

当事務所では、BitTorrent利用による著作権侵害として、プロバイダーから「意見照会書」が届いたがどうしたらよいか、というご相談を多くいただいていますが、その際の対応を考える上で、この裁判例は有意義に思いましたので、詳しめに検討していきたいと思います。

なお、とりあえず結論だけ知りたいと言う方は、ここをクリックして、この解説の最後にある「まとめ」にジャンプしてご覧ください。

裁判で争われた争点ごとの結論と、実際の相談事例との関連

この事件では、原告・被告とも、ふだんから我々が考え、また依頼者の方からもしばしば受ける質問のヒントになるような争点について争われています。

そこで、以下では、特に大きな3つの争点について、①争点、②裁判所の判断、③当所の相談でよく聞かれることへの影響、という観点で整理します。具体的な争点ごとの詳細は、別な機会での説明を予定しています。

〔争点1〕著作権侵害(行為)の有無

①争点

そもそも、BitTorrent自体はなんら違法性がない仕組みですし、また、民事訴訟は漠然と「なんらかの違法なファイル共有をした」ことを争う場所でもありません。著作権侵害を理由に損害賠償請求をする場合、著作権者は、自分が著作権を有する動画のうち、どの動画について相手方がどのように著作権を侵害したのかを具体的に証明する必要があります。

争点1では、この点について、「本件で問題とされている特定の動画ファイル」を本当に一審原告らが共有(ダウンロード及びアップロード)したのか、具体的な侵害行為の有無について争われました。

②裁判所の判断

この点について東京地裁は、X5とX11については「IPアドレスに係るハッシュは明らかではないので、…ダウンロードしたと認めることはできない。」と認定し、知財高裁もこの判断を維持しました。

意見照会書を受け取った方は、おそらく、プロバイダーからの資料にハッシュ値(データを関数に入れて計算して得られる計算結果の数値。同じデータであれば同じ数値になる。逆も真かはモノによる)が書いてあるかと思います。本件では、裁判所に出された証拠上、X5とX11については、問題とされた特定の動画ファイルと一致すると認定できなかった(ので勝てた)ということかと思います。

一方、X5とX11以外のユーザーについては、東京地裁及び知財高裁とも侵害行為を認定しています。

③当所の相談でよく聞かれることへの影響

実際のところ、BitTorrent系のソフトを使用する際に、細かい動画のタイトルや制作会社を覚えている人は多くはないため、具体的な「その」動画を共有したかは記憶にない、という方は多くおられます。

ただ、本件についての具体的な背景はわからないのですが、判決書を読むかぎり、X5とX11については特殊な事情があったようです。

一般的には、著作権者が、信頼性が確認されたとされるシステムによってBitTorrentのネットワークを利用しているIPアドレスとファイルのハッシュ値を具体的に特定し、これに基づいて発信者情報開示請求をし、その後にプロバイダーから著作権者に対してIPアドレスに対応する契約者の氏名及び住所の開示がされ、後の裁判はそれを前提に進む、というのがよくある流れかと思います。

とはいえ、そもそもIPアドレスは特定の個人に紐づけられているものではなく生成したソケットに紐づくものですし、今後も争点となる余地は多々あるように思います。もしご自身が受け取った意見照会書等に疑問がある場合は、ご相談ください。

〔争点2〕共同不法行為性について

①争点

我々は、通常は自分がしたことの範囲でしか責任を負いません。例えばAさん、Bさんの二人が別々にCさんの権利を侵害した場合、AさんとBさんは、それぞれ別々にCさんに対して損害賠償債務を負う(民法427条の分割債務となる)のが一般的な不法行為の考え方です。

しかし、ある損害の発生について複数の人の行為が直接又は間接に相関連共同している場合など、原則通りだと不公平が生じる場合は、その損害の賠償について、関係者全員に連帯して共同責任を生じさせる規定があります。民法719条には、こうした「共同不法行為」に対する共同責任について規定しています。

共同不法行為が争点となった理由は、BitTorrentに参加するノード(ピア)間で送受信されるデータの単位は、大元の動画データを細かく分割した一部である「ピース」であり、ここのピースだけを見ると「著作物(=思想感情を創作的に表現したもの)」とは言えないんじゃないか、という当然の疑問が生じるためと思われます。

著作権侵害は「著作物」を複製したり、ネット上のオープンな場所に置いたりした場合に問題になるわけですから、BitTorrentにおいてピア間で送受信する「ピース」が著作物でないならば、著作権者は、ある一つのピアが全てのピースを送受信したことを立証できなければ、当該ピアに対応するクライアントを起動していたユーザについて著作権侵害が成立しないことになりえます。

しかし、BitTorrentによるファイル共有について上記の共同不法行為が成立するならば、ある動画ファイルのトラッカーにぶら下がる全てのピアが相互に関連し共同してファイルを共有しているのだから、当該ピアに対応するクライアントを起動していたユーザ全員に対して共同責任を生じさせることができます。

そのため、本件でも共同不法行為の成否やその内容が争われています。

②裁判所の判断

知財高裁は、Torrentのネットワークにおける通信の実情等を認定しつつ、719条1項の共同不法行為の成立を認めました。ただ、共同不法行為で議論されている細かい法律論の中身については特に触れられていません(それが裁判所全般のデフォルトですが)。

③当所の相談でよく聞かれることへの影響

我々の相談者のうち、BitTorrentの仕組みについても調べておられる方で、「動画ファイルの一部しか送っていないのであれば著作権侵害が成立しないのではないか」と質問してこられたケースがありました。

私自身、判決書を読んだだけなので本件の裁判所の認定がどこまで妥当なのかはよくわかりませんが、本件を参照する限り、たとえ動画の一部のみをアップロードした場合にも、著作権侵害は成立すると言う判断がされる可能性が高いということになりそうです。

また、相談者の中には逆にBitTorrentの仕組みを全くわかっておられなくて、「自分が取得したファイルがその後に送信(可能化)していることを知らなかったのだが、それでも責任を負うのか」と質問される方もおられます(こちらの方が多い印象です)。

これについて裁判所は「ファイルをダウンロードした場合、同時に、同ファイルを送信可能化していることについて、認識・理解していたか又は容易に認識し得たのに理解しないでいたものと認められ、少なくとも、本件各ファイルを送信可能化したことについて過失があると認めるのが相当」 という判断を示しています。

〔争点3〕共同不法行為に基づく損害の範囲

①争点

BitTorrent上で動画ファイルを共有することについて、各ピアとなるクライアントを起動させているユーザ間に共同不法行為が成立する場合であっても、共同責任を負うべき期間は、当該ネットワークが発生してから(トラッカーが稼働してから)未来永劫の全ての期間(最大の期間)から、各ピアごとに、起動していた個別の合計時間(最小の期間)まで、大きな幅が考えられます。

しかし、いくら共同不法行為が成立するとしても、そもそもBitTorrentのネットワークに参加する前に他人が侵害した分まで責任を負わされるのは因果関係がなく不当ではないか、とも思われます。

本件でもこの点が争点として争われました(他にも、損害額を推定する際の要素について争われていますが、期間の認定が特に問題になるように思いますので、他の点はここでは省略します)。

②裁判所の判断

結論として、裁判所は、各ユーザがBitTorrentを利用していない時期については因果関係がないとして、BitTorrentの利用前と、利用終了後については責任を負わない旨を判断するとともに、ユーザごとに侵害行為の始期と終期を認定しました。

このうち始期については、言及されている具体的な証拠の内容がわからないのですが、おそらくBitTorrentの使用状況を調査するサービスにおいて、当該ユーザに対応するIPアドレスが特定の動画ファイルに対応づけられて検出された日時のうちのいずれかを使っているのだろうと思います。

一方の終期については、原審の東京地裁では、「各ユーザがプロバイダーから意見照会書を受け取って(本件訴訟の代理人となっている)弁護士に相談した日」と認定したのに対し、知財高裁では、「各ユーザがプロバイダーから意見照会書を受けた日」に訂正されています。

③当所の相談でよく聞かれることへの影響

相談者からは、プロバイダーから割り当てられるIPアドレスが変わることを根拠に反論できないかという質問をうけることがありますが、少なくともプロバイダーから開示された結果に基づいて事実認定がされている限りでは、IPアドレスの割り当てが動的であること自体は問題になりにくいように思います。

むしろ大事なのは、BitTorrentで違法な行為をしてしまったことを自覚したなら、なるべく早く同クライアントの「利用を終了したことの証拠」をつくることかと思います。 訴訟で争う場合はもちろん、示談交渉で和解する場合であっても、あまりに利用期間が短いことを示す証拠があれば、交渉の幅が出てくる可能性があるためです。

上記の証拠作りについても、状況に応じて色々な方法が考えられますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

かなり長くなってしまいましたが、まとめると、

  • 侵害行為を否定することは、相手方が立証に失敗しない限り、こちらから積極的な「何か」を証明しないと難しいだろう
  • 「BitTorrentの仕組みを知らなかった」は、たぶん認められない
  • 著作物の一部の送受信であっても、共同不法行為として著作権侵害が成立しうる
  • 賠償責任を負う期間は、各々がBitTorrentの利用を開始した時期から利用を終了した時期まで
  • 少しでも責任を負う期間を短縮するためには、早期に利用を終了した証拠を作っておくことで有利になる可能性がある

となります。

我々がBitTorrentの著作権侵害について依頼を受ける際、基本的には、妥当な示談金で収まるのであれば相手方弁護士との交渉を通じて示談するのが、結果的に依頼者の負担軽減につながるケースが多いように感じています。

本件は一審原告が多数いるため一人当たりの具体的な弁護士費用がどうなったのかわかりませんが、通常は、違法な動画共有について裁判で争うのは、費用面に加えて、時間的・精神的な負担も大きいのではないかと思います。また、仮にある訴訟で勝ったとしても、BitTorrentで色々共有していた場合には、別な著作権侵害について別途訴訟を起こされるリスクもあります。

こうしたコストとのトレードオフとして、合理的な範囲での示談ができるようにお手伝いしておりますので、プロバイダーから意見照会書が届いたり、あるいは届く前であっても違法に著作権侵害をしてしまった、という方は、お気軽にご相談ください。不安を解消するための一番良い方法を、一緒に検討させていただきます。

事業をする際に知っておきたい商号と商標の基本クイズ

はじめに 〜「商号」と「商標」と「商標権」の違い〜

会社をつくって事業を始めようとする際は、会社の名称を「商号」として登記します(会社法6条1項「会社は、その名称を商号とする。」)。たとえば会社の名称として「株式会社 力新堂」を登記した場合、「力新堂」ではなく、「株式会社 力新堂」全体が商号となります。つまり、商号とは会社のフルネームにあたります。

一方、法律(商標法)上に「標章」という言葉があります。標章は、典型的には文字や図形等で構成されるマークです。たとえば「力新堂」は、文字だけからなる標章と言えます。

こうした標章が、商品やサービスと紐づいて使用されると、「商標」になります。

例えば「株式会社力新堂」が、パン屋を始めた場合、パンの包み紙に他のパン屋のパンと区別するためのマークとして「力新堂」と書いた場合、パンという加工食品に紐づけて「力新堂」という「商標」を使用していることになります。 逆に言えば、商品やサービスに紐づかない(限定されない)商標は、ありません。

また、「商標」かどうかは、いわゆる商標出願の手続きの有無とは関係ありません。

たとえば「力新堂のパンがおいしい」と評判になった場合、この評判にタダ乗りしようとして、別のパン屋がパンの包み紙に「力新堂パン」と真似してくることは、あり得る話です。 そんなとき、比較的簡易に他店のタダ乗りをやめさせる事前の備えとして国が用意している仕組みが、商標登録出願です。

具体的には、特許庁に対して、自分が使用している(または使用予定の)「商標」を「使用する商品やサービス」と紐づけて出願します。特許庁の審査を経て設定登録をうけることができれば、出願した商品やサービスについて当該商標を独占的に使用できる「商標権」が得られます。

商標権は商標の保護に特化している分、他のより一般的な法律を使う場合と比べて、自分の商標を法的に保護(差止請求や損害賠償請求)しやすいように制度が出来ていることが、わざわざ商標登録出願をする意義と考えられます。

なお、「商号」を商標登録出願することも可能です。上記の例では、「株式会社 力新堂」を「パン」について商標登録出願するケースです。これを、知財業界的に「商号商標」と呼んだりする場合もあるように思います。

以上を踏まえてクイズです。

クイズ: 商号と商標出願の関係

Q1

例えば、Aさんが神戸市に「株式会社 力新堂」を設立したあと、これと無関係のBさんが京都市で「株式会社 力新堂」を適法に設立した場合を考えます。 なお、いずれの「株式会社 力新堂」も、残念ながら周知・著名ではない会社とします。

ある日、京都市のBさんがGoogleでエゴサーチしていたところ、神戸市にも同じ社名の会社があることを知り、もし相手(Aさん側)が先に商号を商標登録したら、自社の社名の使用が差し止められるかもしれないと考えたとします。

この場合、Bさんは「株式会社 力新堂」を商標登録出願すべきでしょうか?

答え: 「株式会社 力新堂」は、両社にとって「他人の名称」に該当するため、Aさんであっても、Bさんであっても、その商標登録出願には拒絶理由が生じている(商標法4条1項8号)。よって、出願すべきではない。

なお、Aさんであれば、Bさんが会社を設立する前に出願した場合であれば、「株式会社 力新堂」という商標を登録できる可能性があります。

Q2

商号についてあれこれ書いておいて言うのもなんですが、我々は普段「商号」をあまり使っていないように思います。例えば「ソニー株式会社のテレビを買った」「トヨタ自動車株式会社の車を試乗した」等という人はあまりおらず、普段は「ソニーのテレビ」「トヨタの車」などと略して言っています(ちなみに仕事では「さん」をつける場合もありますが、これも略称にさん付けしているのではないでしょうか)。

では、Bさんも商号から「株式会社」を略した「力新堂」を念のため商標登録したいと考えた場合は、これもダメなのでしょうか?

答え: 「力新堂」は、商号「株式会社 力新堂」の「略称」であるところ、「略称」は著名でなければ先の商標法4条1項8号の拒絶理由にはあたらず、出願の早い者勝ちで登録される可能性がある。

したがって、例えばBさんが、Aさんより早く商品「パン」について商標「力新堂」を出願した場合、Bさん(だけ)が当該商標について登録を受けうることになります。

この場合、Aさんはどうなるのか?Bさんより早く会社を設立したのに、自社のパンに自社の名前すら書けなくなるのか?という点が気になりますが、この点は商標法26条1項1号が「自己の…名称…を普通に用いられる方法で表示する商標」には、「商標権の効力は…及ばない」と規定して、(一応)手当てしています。

具体的には、Bさんがパンについて商標「力新堂」を登録した場合であっても、Aさんは、自社のパンの袋に、自社の名前「株式会社 力新堂」を書くことはできます。

しかし、これはあくまで「自己の名称」を「普通に用いられる方法で」すら商品に書けないのは色々と不都合だから、という話であって、実際は袋の裏に小さなありふれた文字で、略さずに「株式会社 力新堂」と書ける、という程度で許されるだけになるかと思います (この範囲を超えて、Aさんの会社が、自社製パンの目立つところに派手な文字で「力新堂」と書くことは、Bさんの商標権侵害となるリスクがあります)。

まとめ

長くなりましたのでこの辺でまとめます。

  • 「商号」は登記された会社のフルネームである
  • 文字や記号などマーク単独であれば「標章」どまり
  • 標章が商品やサービスと紐づけて使用されると、これを見た買い手(需要者)が他の商品やサービスと識別するためのマーク=「商標」になる
  • 商標を特許庁に出願して設定登録されると「商標権」が発生する
  • 「商号」であっても、商品やサービスと紐づけて使用されると「商標」となるため、商標登録が可能
  • 特に商号の一部を商品やサービスに使う予定がある場合は、早めに商標登録出願をしておくことがトラブル防止に役立つことも

力新堂法律事務所では商標登録出願の相談を受け付けています。初回相談は無料ですのでお気軽にご連絡ください。

BitTorrent(ビットトレント)等のファイル共有ソフトウェアで発信者情報開示請求を受けてしまった場合のゴール設定の考え方

忘れた頃に届くプロバイダーから意見照会書

多数ご相談いただいているビットトレント(及びμTorrentなどその互換ソフトウェア)などのファイル共有ソフトウェアによる著作権侵害事件ですが、多くの相談者の方は、違法行為から数ヶ月たって忘れた頃にプロバイダーから意見照会書が届いてびっくりされます。

ただ、意見照会書には通常、「こういう動画共有についての著作権侵害を疑われていますよ」と、画面がキャプチャされた資料も添付されていますので、それを見るとある程度は納得されて、行為自体は争わず、円満な解決を望まれる方がほとんどです。

動画共有の著作権侵害における円満解決とは?

ビットトレントなどのファイル共有ソフトウェアにより違法な動画共有をやってしまった方にとっての、その後のリスクとしては、民事訴訟での損害賠償請求に加え、刑事事件化されるリスクも想定されます。

そこで、この場合の円満な解決策としては、ある程度のお金を払うことで、民事・刑事の責任追求をこれ以上しない、というような内容の「示談書」締結をゴールに設定することが多いです。

早期に示談してしまえば、相手方(著作権者)側の裁判手続きに必要な負担も減りますから、比較的低い金額で示談に応じてくれやすくなる傾向がありますし、ご自身の弁護士費用も安くなるはずです。

また、訴訟手続きには、相手方の氏名、住所等の情報が必要(なので、発信者情報開示請求をする)ですが、弁護士がついた示談交渉であれば、場合によりけりですが、著作権者にご自身の住所などを伝えることなく事件を終わらせられることも多いです(なお、氏名は示談書に記載するのが通常です)。

相談はご遠慮なく

著作権者側が訴訟を前提とした手続きを始めている以上、心当たりがあっても無くても、放置しておいて良いことはおそらく無いと思います。

意見照会書が届いたら、少しでも早めにご相談ください。ZOOMやLINEによるオンライン相談も初回無料でお受けしていますし、相談日時について、我々も可能な限り迅速な対応ができるよう努めています。

中小企業の経営者がすべき情報セキュリティ対策について〜IPAセキュリティセンターのガイドラインより〜

はじめに

つい先日、トヨタ自動車の仕入れ先である部品会社で生じたシステム障害によって、国内全工場が停止するという事件があました。官房長官から、原因はサイバー攻撃であるという発言もあり、経産省からも、サイバー攻撃のリスクに対する注意が呼びかけられているようです。

以前の中小企業の経営者にとっては、海外政府が関与するようなサイバー攻撃は遠い世界の出来事のように感じておられたかもしれません。しかし、(今回の事案がどうだったかはわかりませんが)サプライチェーン上で一番弱い部分を叩くというのは、サイバー攻撃の定石のひとつです。

いまどきは、調達、製造、販売と一連のサプライチェーンがITシステムで緊密に連携して動く場合が大半かと思います。したがって、自社のセキュリティ対策が、少なくとも一般に求められているものと比較して不備の程度が大きかった場合、そして、それを見つけた集団にサイバー攻撃の対象とされた場合、これによって自社に生じる損害は莫大なものとなる可能性があります。

そのため、今後ますます中小企業にとっても情報セキュリティへの投資が経営上の重要な課題となっていくと思われます。

以下では、IPA(情報処理推進機構:経産省が所管し、日本のIT国家戦略を技術、人材の面で支えるために設立された独立行政法人)セキュリティセンターが、2021年3月10日に公表した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第3版」(リンク:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 以下、「ガイドライン」といいます)をベースに、重大なリスクを回避するために、中小企業の経営者は具体的にどのように動くことが求められているのか、について検討します。

企業にとっての重大リスク

まず最初に、情報セキュリティ対策が不十分であるために、企業がどんな不利益を被るのかを以下に整理します(参照:ガイドライン pp.6-7)。

(1) 金銭的損失:顧客や取引先からの損害賠償請求、ランサムウェアの身代金や不正送金等による直接的な損失

(2) 顧客の喪失:受注停止、取引先の信用失墜

(3) 業務の停滞:原因調査や被害拡大防止のため、情報システムの停止、インターネット接続の遮断などが必要となり、納期遅れ・営業機会を損失

(4) 従業員への影響:モラルの低下、事故の責任問題への不満。ある経営者「個別の損害より、職場環境が暗くなったことが一番困った」

経営者にとっての重大リスク

次に、情報セキュリティ対策が十分ではなかったことで、「経営者個人」に対して問われうる責任として、以下の法的責任と社会的責任が挙げられています(ガイドライン pp.8-9)。

法的責任

(1)個人情報保護法、(2)マイナンバー法、(3)不正競争防止法、(4)金融商品取引法、(5)民法

社会的責任

顧客・取引先・従業員・株主などからの経営者としての責任追求(その結果、会社法上の法的責任が追求されるリスクも生じる)

コメント

ガイドラインには、個人情報保護法・マイナンバー法・金融商品取引法については、懲役や罰金の規定もあることが触れられています。とはいえ、上記の法的責任については、それぞれ該当する場合の要件が厳密に決まっていますので、たとえば会社のPCがウィルスに感染したからといって、即座にこれらの法律に触れて違法になるというわけではありません。まずは、事実確認が大切です。

経営者に求められているアクション

同ガイドラインでは、中小企業の経営者に対して、①「3つの原則」を認識することと、②それを踏まえて「7項目の取組」の実施を社内で指示することが求められています(ガイドライン pp.10-13)。

以下、詳細を記載します。

経営者が「認識」すべき「3原則」

原則1:情報セキュリティ対策は経営者のリーダーシップで進める

例えばパスワード管理を厳密にするなど、セキュリティをしっかりしようとするほど、会社の従業員にとっては、普段の仕事上で面倒や不便が増えてしまいます。特に、情報セキュリティを所管する担当者や部署が設置されていない中小企業では、なおさら、情報セキュリティ対策には消極的になりがちです。

したがって、最終的な意思決定ができる経営者が強力なリーダーシップを発揮して、継続的に対策がまわるようになるまで組織や体制まで整えていかなければ、しばらくして振り返ると「よくわからない高い装置を買っただけ」「規定は作ったけど、社内の誰も知らない」といった状況になってしまいがちです。

原則2:委託先の情報セキュリティ対策まで考慮する

たとえば、自社が他社の秘密情報等を受領し、これを業務委託先に預けた場合を考えます。業務委託先の情報セキュリティ対策がおそまつであったために他社の情報が漏洩してしまった場合、法的にも社会的にも「委託先が悪い。うちは悪くない」という主張が通じるかというと、難しい場合が多いと思います。しかし、業務委託先の情報セキュリティ対策について、どの程度関心をもってきたかと問われると、「うーん」というケースが多いのではないでしょうか。

実際には、他社から秘密情報を受領する段階の契約で、委託先に対する契約上の管理義務を負っている場合も多いかと思いますし、中小企業の経営者に対して、こうしたガイドラインが提示されている以上、経営者としては「自社同様、委託先の情報セキュリティ対策についても注意を払うべし」という認識をもたざるを得ないかと思います。

原則3:関係者とは常に情報セキュリティに関するコミュニケーションをとる

少なくとも、事業上の関係者(顧客・取引先・委託先・代理店・株主など)に対して、自社の情報セキュリティ対策等についての説明責任を果たすためには、日頃から経営者自らがこれを理解しているよう努めることが大切です。

なお、そのためのコミュニケーションツールとして、情報セキュリティ対策に取り組んでいることを自己宣言する制度「SECURITY ACTION」が準備されています。IPAのサイトから同制度の申し込み(SECURITY ACTION ロゴマークの使用申込方法 : SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言)をすると、「SECURITY ACTION」の自己宣言をしたことを示すロゴをダウンロードして、使えるようになります。

経営者が指示すべき「7項目の取組み」

1 情報セキュリティに関する組織全体の対応方針を定める

具体的には、「情報セキュリティ基本方針」を文章として作成し、これを周知することになります。

2 情報セキュリティ対策のための予算や人材などを確保する

具体的には、情報セキュリティの責任者や緊急時対応体制の整備などを含む管理体制の構築や、情報セキュリティ規定の作成、などをすることになります。

3 必要と考えられる対策を検討させて実行を指示する

具体的には、いますぐ始められる小さな対策(パスワードの強化やOSのアップデートなど)から始めて、現状の把握と対策の決定・周知、特に委託時の対策等を決めるよう、指示することになります。

4 情報セキュリティ対策に関する適宜の見直しを指示する

具体的には、使用するクラウドサービスの情報セキュリティの確認、各種情報セキュリティサービスの活用などが挙げられます。

5 緊急時の対応や復旧のための体制を整備する

自社システムの全体構成を図式化するなどして把握したうえで、対策の検討と必要な予算の確保等をすることになります。

6 委託や外部サービス利用の際にはセキュリティに関する責任を明確にする

これに限らずですが、自社が締結する業務委託契約の内容についても精査・改善していくことが望ましいです。

7 情報セキュリティに関する最新動向を収集する

例えば、IPAのメールニュース(メールニュース:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)に登録することで、セキュリティ対策情報が送られてくるようになります。また、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)のウェブサイトからは、調査報告書などの公表資料が取得できます。そのほか、ネット上にはさまざまな情報がありますが、真偽のほどはご自身で判断する必要があります。

おわりに

以上、IPAのガイドラインを参照しつつ、中小企業の経営者がどういう認識をもって、どういう指示を出す必要があるかについて、大枠をご説明しました。

たとえば、情報セキュリティ規定などの文章についてはIPAからサンプルが出ていますが、分量が膨大ですし、なにより内容を理解せずにそのまま社名だけ変えたとしても本質的には何の意味もありません。また、取引先との秘密保持契約や業務委託契約の内容についても、情報セキュリティの事故を想定したものになっているか、見直しが必要になる場合もあります。


情報セキュリティ対策として最低限何をしていれば良いかよくわからないという経営者の方には、初回無料でご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。

エルデンリングのプレイ動画配信禁止騒動で考える、著作権の事業活用について

はじめに

2022年2月25日、いわゆる「死にゲー」で知られるフロムソフトウェアから「エルデンリング」(という名前のゲーム)が発売されました。この文章を書いているのが2月28日(月)なのですが、私自身は土日で16時間ぐらいプレイしたものの、ゲーム進行度は、まだ序盤も序盤というところです(経験値稼ぎだけは頑張るタイプ)。


この「エルデンリング」の発売にあたっては、Twitterで、ゲーム動画配信をフロムが禁止した?!的な投稿が話題になりました。その後、フロムソフトウェアから、「動画・画像の投稿に関するガイドライン」という形で公式見解が発表されました(動画配信・画像投稿に関するガイドライン | FromSoftware – フロム・ソフトウェア)。

詳細は上記ガイドラインを読んでいただくとして、ざっくりといえば、各自で付加価値をつけた常識的な内容のゲームプレイ動画であれば、YouTube等、JASRACと音楽に関する利用許諾契約を締結している動画共有サイトに投稿してもOK(ただしスパチャ等は禁止)ということになっているようです。


上記内容に、私自身としては非常にホッとしました。以下では、①平凡かつ、へぼゲームプレーヤーである私がなぜホッとしたのかという点、②フロムソフトウェアの今回のガイドラインから、「死にゲー」というジャンルを市場で盛り上げるためにあるべき著作権と契約の関係について、勝手かつ無責任に検討してみます。

YouTubeの動画が、折れた心を繋ぎ止めてくれたという事実

私はデモンズソウルからソウルシリーズを(一応)プレイしています。ちなみに「ソウルシリーズ」というのは、フロムソフトウェアの過去作には「〜〜ソウル」という名前のゲームが多かったため、一連のシリーズを総称する際の慣用表現的なものです。

このソウルシリーズは「死にゲー」と言われており、何度も何度も何度も死んで覚えていくタイプの難易度の高いRPGです。当然、途中で心が折れて挫折するケースもあり、アクションが苦手な私などは、魔法でアクションを回避しやすかったデモンズはなんとかなったものの、以後のダークソウルでは、軒並み一度は心が折れてプレイを中断しています。

そんな私ですが、一応なんとか全シリーズについて、最低1周は終えていますが、それはネットの情報、特に解説動画のおかげであったと断言できます。

高難易度のボス戦での、ボスの行動パターンや自身の立ち回りなど、言葉にすると冗長過ぎて余計混乱することも多々ありますが、動画で「こういう攻撃がきたときだけR1で、それ以外はひたすらローリング回避」みたいに見せてくれると、非常にわかりやすく真似しやすいと実感しています。

今作のエルデンリングも事前予約していたため、もし本当にプレイ動画の公開を禁止されてしまったらどうしよう(完全に心が折れそう)という心配がありました。

そのため、フロムソフトウェアが公式にガイドラインを公開され、おそらくは従来通りのプレイ動画で「勉強」させて貰えそうと分かった時は、ホッとしました。

尖ったジャンルの裾野を広げるツールとしてのゲーム動画

今更ですが、前提として、一般にゲームの映像は映画の著作権(に類するもの)等として保護されると考えられます。そして、著作物を「著作者に無断で」複製したりネット配信したりすることは、著作権法に違反する可能性が高いです。

ここでのポイントは「著作者に無断で」するとダメだけれど、著作者が良いというなら、問題ないということです。

(当たり前といえば当たり前なのですが、ダメだと禁止する根拠は著作権法という法律である一方、良いと許諾する根拠は(主に)契約という当事者の意思によるという点で、法律的には色々と考えるべきことはあります。)


いずれにしろ、私が実感として感じるのは、「死にゲー」という尖ったジャンルの裾野を広げ発展させたことに対して、YouTube等の動画の寄与は小さくなかったんじゃないかな、ということです。

これが、ふつうのゲームであれば、ゲームの著作権者が、プレイ動画がネット上へアップロードされるのを(黙示的であれ)承諾する理由としては、おそらくゲーム未購入者に対して内容を周知するためのプロモーション的な期待が大きいのかな、と思います。

しかし、死にゲーであれば、ゲーム購入者こそが解説動画を必死で見ることも想定されます。そのため、制作側は、ゲーム購入者が解説動画を見る可能性も考慮して高難易度のゲームバランスを追求でき、プレイヤーとしても、自分の好みに必要に応じて解説動画を見たり見なかったりすることで難易度を調整できるはずです。

著作権による禁止と契約による許諾のバランス

以上は私の勝手な考察ではありますが、今回、フロムソフトウェアが公開された「ガイドライン」を読みながら、著作権(を含む知的財産権)を事業に繋げてお金にするには、もちろん著作権の保護は大切ではありますが、それをふまえた独自のビジネスモデルや、それを支えるユーザーコミュニティを構築するための契約(ガイドライン/利用規約など、呼び方は問わず)をどれだけ具体的に考えられるかが重要だなと、改めて感じた次第です。

BitTorrent(ビットトレント)系のP2Pソフトウェア(ファイル共有ソフトウェア)による著作権侵害について

はじめに

BitTorrent(ビットトレント)は、たとえばOS(オペレーティングシステム)のような大容量のファイルをインターネットで配布/共有する際に、特定の配布サイトに負荷が集中するのを軽減して、素早くファイルを配布/共有することを目的に開発されたP2Pソフトウェアです。

技術的には有意義なBitTorrentによるファイル共有ですが、こうしたBitTorrent(およびμTorrentなど、その亜種)を利用して著作権侵害(著作権者に無断で、著作物である動画等をファイル共有)してしまい、著作権者から利用者のプロバイダーに対して発信者情報開示請求がされるケースが増えています。

侵害をしてしまった人の多くは、プロバイダーから意見照会書が届いたタイミングでこれを知り、どう回答したらよいのか?今後どうなるのか?という部分に不安を感じ、相談に来られています。

そこで以下では、BitTorrentで違法なファイルを共有することの法的な意味とその後の対応について解説します。

BitTorrnetによるファイル共有はどんな権利を侵害しうるのか

「自分はダウンロードだけしているつもりで、アップロードまでしているとは知らなかった」と、相談された方から言われることが多いです。

それは事実なのだと思いますが、とはいえ、対象となるファイルが、誰かの「著作物」であった場合、その著作権者の承諾がない限り、それをダウンロードすることは著作権法上の「複製権侵害」にあたります。

また、ダウンロードした後で、これをアップロードすることは「公衆送信権」/「送信可能化権」などの侵害にあたりえます。

なお、「あたりえます」と微妙な言い方になるのは、ビットトレントのプロトコルの仕様上、必ずしもダウンロードした量と同じだけをアップロードしたことになるとは言い切れないなど、法律の要件にあてはめると、厳密には色々と検証の余地があるように思われるためです。

長時間使用していると多額の損害額が推定されうる

著作権侵害の場合、刑事裁判の可能性も無いわけではありませんが、多くの場合は民事裁判が主になると思います。

そして、著作権者が、著作権を侵害した相手に請求できることは2つあります。1つ目は差止請求(たとえば、違法な複製物をこれ以上共有されないように削除しろと請求すること)であり、2つ目は損害賠償請求(金を払えと請求すること)です。

個人がBitTorrentで著作権侵害をしたような場合、差止めの方は問題とはなりにくく、主には損害賠償請求が問題になります。そして、著作権法114条には損害額の推定規定があり、ざっくり言えば、たくさんの人へアップロード(公衆送信)して共有するほど損害額が高額になりえます。

そのため、自分のPCでビットトレントのソフトウェアを長時間起動しっぱなしにしていた場合、思いがけないほどの多人数へ公衆送信してしまっており、多額の損害額が推定されるリスクが生じえます。

意見照会書後の対応

具体的な対応は、意見照会書を受け取った方が、自身の行為を認めるのか、人違いだと争うのかで全く異なってきます。そのため、まずは認めるのか否かをご自身で決めていただく必要があるかと思います。

その後は、認める場合も争う場合も、BitTorrentによる著作権侵害紛争については、通常のWEBやSNS上でなされた著作権侵害紛争とでは、法律上の手続きや技術的観点において、共通する部分と、争点が異なる部分とが生じ得ますので、ご自分であれこれ検索するよりは、一度、弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか? 当所でも初回無料でオンライン法律相談が可能です。

おわりに

つい安易な気持ちで違法行為をしてしまった方がプロバイダーから手紙を受け取った時の不安な気持ちは大変なものだと思います。当所へ相談に来られる多くの方は、「ファイル共有ソフトウェアはもう懲り懲りだ」と言われます。

ただ、BitTorrentを含め、P2Pによるファイル共有の実装なり技術自体は良いも悪いもない「ただの道具」ですので、世の中をより良くする便利な使い方も勿論あります(刃物や自動車と同じです)。

当事者となられた方にとっては、今はそんなことを考える余裕はないかもしれませんが、一旦、当該紛争に決着をつけて落ち着いたあとは、便利な道具を正しく使うようにリテラシーを高めていく具体的行動をとることが、次の過ちを防止する上でも大切なことではないかと思います。


誤解しているかもしれない著作権の基本クイズ(2)

営利目的じゃなきゃ大丈夫?

先日、デザイナー(のたまご)をしている友人から、オシャレ系某有名ブランドのロゴをもじったロゴを使ってトートバッグを作っても大丈夫か、という質問を受けました。

その際に、「営利目的じゃなきゃ著作権は気にしなくて大丈夫って、YouTuberが言っていた」と聞いて、確かに同じような誤解をしている方が少なくない印象でしたので、今回は、「営利目的と著作権」について少しお話しさせていただきます。

結論は「大丈夫じゃない」

最初に結論から言いますが、営利目的じゃなくても「大丈夫じゃない」場合が多いです。というか、そういう疑問を抱くような状況では、ほぼ「大丈夫じゃない」と考えて良いかと思います。以下、その理由です。

条文を検索してみました

前提として、我々が、目に入った他人の創作物を参考にして何かをしたからといって、なんでもかんでも著作権侵害になるわけではありません。

ただし、友人のように、有名ブランドのロゴをもじってロゴを作成するようなケースでは、直感的には「あぶないな」というのはわかると思います。具体的には、著作権法だけ考えても翻案権侵害や、同一性保持権侵害等が想定されますし、その他、商標権侵害や、不正競争等、色々心配になります(なお、そのブランドは商標権をとっていないようで、それはそれで不用心な気はしました)。

だからこそ、「営利目的じゃなきゃ大丈夫」みたいなお守りが欲しくなるのだと思いますが、現行の著作権法(令和二年法律第四十八号による改正)のなかで、「営利」という言葉が出てくるのは、21箇所です。

条文をベタッと貼っても読むのが辛いと思いますので、ざっくりまとめると、

…という感じです(正確には、例えば百二条で著作隣接権の場合に準用される場合があるなど、これだけが全てではありませんが、話が複雑になるので置いておきます)。

以上の通り、主体がかなり限定されている規定がほとんどですので、おそらく著作権が気になるケースの大部分では、営利・非営利は関係がないと思われます。

定食屋のテレビで見る相撲中継と、スポーツバーのプロジェクターでみるサッカー中継の違い

上記の条文の中でも、第三十八条は比較的多くの方が関係する規定かと思いますので、参考までに少し解説します。

同条の第一項は、典型的には学園祭等で軽音サークルが人気J-POPを演奏するような場合は、著作権者の許可はいりませんよ、という規定です。ただし、入場無料に加えて出演者もノーギャラであることが必要になります。

また同条第三項によると、営利目的ではなく、料金を取らない場合には、放送等された著作物(テレビ番組)をリアルタイムで公衆に対して家庭用テレビで映して見せてもOKとなります。例外として、例えばまちの定食屋等によくある家庭用テレビで相撲中継などを勝手に流すのは(おそらく営利目的にあたりますが)OKになります。これで著作権者等の利益を損なうとは考え難いためです。

しかし、たとえばAmazonで個人的に買ったアニメのブルーレイを喫茶店のモニターで流したり(これは「放送」ではないので上記一項の問題になるが、営利目的となるので一項の要件にあてはまらない)、スポーツバーなどで大型プロジェクターを使ってスクリーンにサッカー中継を流すには(家庭用の装置とは言えず、放送事業者がもつ著作隣接権とも問題が生じうるため)、どこかで著作権者等の承諾が必要となる可能性が高いです(そのため、業務用として販売されるメディアを購入したり、事前に管理団体と契約をしておくことなどが必要になります)。

なお、映像だけではなく音についても同様であるため、例えばサッカー中継を家庭用テレビで受信しつつ、音声を業務用のスピーカーに繋げて公衆に聞かせる場合にも注意が必要です。

まとめ

以上、繰り返しになりますが、営利目的かどうかが著作権侵害の成否に影響する場面は、かなり限定的なため、多くのケースでは「営利かどうかは、著作権侵害の成否には関係ない」(営利目的ではないことが、言い訳にはならない)と考えておくほうが無難かと思います。

心配事などがありましたら、我々へお気軽にご相談ください。

(弁護士・弁理士 伊藤 英明)


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