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著作権問題の全体像(後編:侵害)

前回分(著作権問題の全体像(前編:権利の帰属))はこちら


前回に引き続き、著作権問題が成立する場合の全体像をもとに、留意すべき各ポイントについてご説明していきます。

ちなみに前回は、権利の「帰属」と、権利の帰属状態が変更される「4個」の著作権取得原因についてご説明しました。今回は、「2個」の残り1個である「侵害」と、侵害が成立するための「3個」の要件についてご説明します。

法的に著作権侵害が成立しているのか(侵害)

著作権は、出願手続きも必要なく、創作行為時にパッと発生し、著作者の死後70年間も存続する(しかも、差止請求ができる)権利です。これは他の知的財産権、例えば特許権が、出願・審査・登録の手続きが必要で、各手続きで安くない費用がかかり、出願から20年で消滅するのと比べると、いかに強い保護が与えられているかがわかります。

その分、権利侵害の場面ではバランスをとっており、後述するように①特定の著作物に依拠して、②これと類似する著作物に関して、③法定の利用行為をした場合にのみ、著作権侵害が成立します。

侵害が成立するための3要件

依拠性

依拠するとは、たとえ無意識であっても既存の著作物をもとにすることを意味します。

とはいえ、内心に関することなので、訴訟になった場合には依拠性を推認させる間接事実(類似性の程度、無意味な部分の共通性等)を積み重ねていくことで立証することになるでしょう(東京高判平成13年6月21日、東京高判平成7年5月16日など)。

類似性

「類似」と言っていますが、もちろん同一の場合も含みます。

なにをもって類似しているというかは、一応裁判所の基準のようなものがあり、「表現上の本質的特徴を直接感得させる」(最判昭和55年3月28日民集34巻3号244頁)か?という検討になります。

この点については、基準になっているのかよく分からないレベルの抽象度なのですが、特にソフトウェアの著作権紛争時の合理性等も踏まえると、私としては、以下の整理(島並 良他, 著作権法入門 第3版 pp.32-26, pp.310-314, 有斐閣 参照)がわかりやすく、かつ妥当だと考えています。

①著作物の類似性は、創作性のある表現が共通するか、を基準に判断する

②創作性が高い場合は、類似性が肯定されやすく、低い場合はほぼデッドコピーの場合に限り類似性が肯定される

③創作性は、(少なくとも検討時には)選択の幅(当該表現に著作権の保護を認めたとすると、他者が同種の表現行為を行う際にどの程度、実質的な選択肢が残されているか?)を基準に考える

法定行為

以前、「権利侵害の警告状を受けたら最初に確認すること(著作権編)」でも少し触れましたが、他人の著作物と類似するからといって、何をするにも著作権者の許諾が必要になるわけではありません。当然ですが、法律で制限されないかぎり我々は自由に行動できるのが原則です。

著作権法は、著作物が著作権者の許諾なく、不特定または多数の人に対し提示・提供されること、及び、その準備的な行為としての複製を制限する目的で、個別にこういう行為は許諾なくしてはダメですよ(でも例外もありますよ)、のような形の規定を多数置いています。

複雑な場合もありますが、客観的に決められる部分ではありますので、トラブルの際は内部の事実関係の確認を含め、十分な対応が必要になります。

まとめ

(前編)とあわせて、著作権でトラブルが生じる場合の全体像を権利の帰属と権利の侵害の「2つ」の場面に分け、権利帰属の場面で注意すべき「4つ」の場合と、侵害場面で確認すべき「3つ」の要件についてご説明しました。

さらに、どういう行為が侵害となるかという点についても、全体像をご説明しました。

細かいことを言い出すとキリがないかも知れませんが、自社/ご自身が大きなトラブルに巻き込まれないために最低限どの点に注意したら良いか、あるいは、既に巻き込まれたトラブルで争点となりそうなのはどこか、を把握することで、効率よく著作権問題に対応できるのではないかと思います。


参考文献

島並 良, 上野 達弘, 横山 久芳. 著作権法入門〔第3版〕. 有斐閣, 2021-3-31.

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