「打消し表示」とは何か?
ECサイトの商品ページや広告バナーで、大きく強調されたキャッチコピーの隅に、小さな文字で「※一部地域を除きます」「※一部商品を除きます」といった注釈がついているのを見たことがあるでしょう。「※一部地域を除きます」は、たとえば「全店XX%割引セール」と訴求したいものの、一部では行っていない場合に使いたいものとなります。また、「※一部商品を除きます」は、たとえば「全品食べ放題」などと訴求したいものの一部有料商品がある場合に使われるものとなります。このように、「強調表示」(「全てのXX」「Xx放題」など)の内容を補足したり、例外条件を付け加えたりする表示を「打消し表示」と呼びます。
打消し表示が十分に機能していないことを理由に、強調表示が景品表示法に違反するという理由で、執行例も数多く見られる訴求類型となるため、今回はこの打消し表示に関するルールを紹介します。
不当表示の判断手法
景品表示法の基礎的な解説は、「ECサイトの運営にあたって必須の知識 ~景品表示法の基礎知識~」で行ったとおりです。強調表示(+打消し表示)についても、特に判断手法に変わりはありません。すなわち、実際の商品・サービスの内容・取引条件を、消費者が勘違いしてしまうような表示であれば、表示規制の違反となってしまいます。
ただし、強調表示・打消し表示による類型においては、以下のとおり、特有の判断が必要となります。
消費者庁が示す「打消し表示」の記載方法
打消し表示に関する注意点を確認する際には、「打消し表示に関する実態調査報告書」及び「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を参照することになります。いずれも消費者庁のウェブサイトに掲載されていますので、概要の資料でもご確認いただくのがよいと思います。いくつかの重要な指摘がありますので、紹介します。
矛盾した内容の禁止
強調表示の内容と打消し表示の内容とが矛盾する場合、打消し表示は意味をなさず、強調表示は不当であると判断されます。
たとえば、ダイエットサプリで個人の体験談として「驚くほど痩せた」などと書いて、「※効果、効能を表すものではない」と書いてあるとします。広告は商品の一般的な効果・効能を訴求することを目的とする以上、「痩せた」という体験談はあくまで一般的な痩身効果を訴求しているものと評価され、「※効果、効能を表すものではない」という記載は矛盾するものであり、体験談の訴求は(科学的に痩身効果がないものであれば)不当であると判断されます。
近接表示・同一視野
打消し表示は、強調表示と近接した場所に表示すべきであり、少なくとも同一視野にある必要があります。
チラシの表面に強調表示を記載して裏面に打消し表示を記載することは同一視野にないと評価されます。また、チラシの隅に強調表示がある場合に、反対の隅に打消し表示を記載することも、近接しておらず問題があると評価される可能性があります。また、ウェブサイトにおいて、1スクロール以上離れている場合は、同一視野にないと評価されます。
なお、強調表示に「*」を付記して、注釈に視線を誘導するといった手法は一定の効果があります。
ハイパーリンク・アコーディオンパネル
関連する重要な注意点として、ウェブサイトにおけるハイパーリンク・アコーディオンパネルがあります。アコーディオンパネルとは、初期状態では見出しのみが表示され、その見出しをクリック(タップ)をすることで、詳細が表示されるようになるという機能を指しています。
これらについては、クリック(タップ)をするまで詳細が分からないという問題があり得ます。打消し表示の内容を「詳細」に記載しても、「見出し」において何が記載されているか予測できなければならなければ、打消し表示として意味をなさないということです。
たとえば、「全店XX%割引セール」(本当は一部例外の店舗がある)に対して、「詳細はこちら」とだけのラベルがあるハイパーリンクが掲載されているだけでは、対象外店舗があるということは分からないため、仮にハイパーリンクの先に対象外店舗の詳細があっても打消し表示として意味をなしていないと評価されます。ハイパーリンクのラベルとして、「一部対象外店舗があります。対象外店舗の詳細はこちら」と記載することで、打消し表示として十分機能していると評価できることになります。
視認しやすい明瞭なフォント
よく問題となる打消し表示の記載として、強調表示と比して文字が小さい、文字色が見えにくいといったものがあります。
文字の大きさに関しては具体的には、業界団体の自主基準ではありますが、「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準及びガイドラインの別表8を参考にするなどして、一般的にどの程度であれば明瞭な打消し表示となるのか確認するのがよいと考えます。
よくあるNGパターン
以上を踏まえて、実際のNGパターンをいくつか示したいと思います。
「葛の花イソフラボン ウエストサポート茶」に関する措置命令
機能性食品の痩身効果に係る訴求に関して処分がなされた事案です。いくつか問題のある訴求があるのですが、そのうちの1つで、体験談として「若いころの服も、普通に着られるようになりました!」等といったものがあり、腹部の痩身効果が得られるかのように示す訴求文言がありました。
このような訴求文言に対し、「※ 個人の感想です。効果効能を保証するものではありません。」等と記載していたが、消費者庁は打消し表示として認めていません。その理由は、上記のとおり、矛盾した内容であり、個人の感想に対する打消し表示としては不適当と判断したのだと考えられます。
「スーツ・コート・ジャケット 全品半額」訴求に関する措置命令
株式会社AOKIに対する措置命令の事案です。テレビCMにおいて「スーツ・コート・ジャケット 全品半額」という映像・音声の訴求に対し、実際はメンズスーツ、メンズコート及びメンズジャケットのうち表示価格が一定金額以上等の商品のみを対象としていたことが問題とされたものです。
このテレビCMにおいて、対象商品に係る打消し表示自体はされていたものの、表示時間が短く、明瞭に表示されていたとはいえないとし、打消し表示が不適切だったと判断されています。今のテレビCMでも細かい打消し表示の文言を短い時間で表示している例も多くありますが、恐らく、「全品」半額という強調を打ち消すためには相応の説明が必要だと考えた結果なのではと想像されます。
「TSUTAYA TV」における動画見放題訴求に関する措置命令
TSUTAYA TVという動画見放題訴求に対して、「動画見放題 月額933円(税抜)」という訴求とともに、背景画像として30本の動画の画像を掲載していました。しかしながら、こうした動画の過半が見放題プランの対象ではなかったという事案です。
この際、「▼動画見放題は新作も観られますか?」「▼TSUTAYA TVの動画配信とは?」質問とこれらに対する回答に係るアコーディオンパネルがあったことが評価されており、①これらの記載が「見放題」との記載とは離れた箇所に小さい文字で記載されていること、②回答への質問はアコーディオンパネルをクリックしなければ表示されないものであったため、打消し表示として不適切だとされています。
誠実な表示がブランドを守る
デザインの観点からは、打消し表示は「目立たせたくないもの」かもしれません。しかし、目立たない打消し表示が必要になるということは、そもそも強調表示が実態以上に「盛りすぎている」ということの裏返しでもあります。
「いかに目立たせないか」ではなく、「いかに誤解させずに伝えるか」という視点で訴求文言を検討することが、最終的にはサイトの信頼性を高め、法的リスクや炎上リスクを回避することに繋がります。
判断に迷うグレーゾーンな表現については、ぜひ一度当事務所へご相談ください。