消費者向けビジネスにおいて重要な景品表示法
「景品表示法」(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)という法律をご存じでしょうか?近時では、いわゆる「ステマ規制」が話題になりましたが、ECサイトにおける商品の説明や広告の内容を規制するものであり、違反時のリスクが大きい重要な法律の1つです。
景品表示法に違反をすると、監督官庁である消費者庁による処分を受け、新聞やニュースで報道されるというリスクがあります。これは、消費者のECサイトへの信頼を大きく毀損するものであり、重大なものです。
さらに、景品表示法に違反した場合の処分には、対象となる商品・サービスの売上の3%程度もの額を国庫に納付するという命令が含まれます。加えて、消費者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。このように、調査や消費者等への対応のコストも踏まえると、金銭面でも大きな負担になります。
本記事では、以上のとおり、ECサイト運営にとって極めて重要である景品表示法の基礎知識を説明することとします。ただし、ECサイトに限らず、消費者に対する事業を行う場合で、商品・サービスの説明が必要なときには、必ず問題となる法律であり、ECサイト運営を行っていないみなさまにも是非読んでいただければと思います。
なお、景品表示法は、広告等の内容を規制する表示規制のほか、景品規制もあります。本記事では実際の処分例の大半を占める表示規制についてのみ説明します。
表示規制の基礎知識
規制の対象となる「表示」は広告だけではない
表示規制は、「表示」を規制するものです。
表示規制の説明をする際によく「勘違いをしていた」とコメントをいただくのですが、「広告」のみを規制するものではないため、広告よりもかなり広い範囲が規制対象となります。次のようなものが含まれ、商品・サービスの説明に利用されるもの全般が規制の対象となります。
商品の容器や包装における表示
見本、チラシ、パンフレットや説明書面
媒体を問わず、広告全般
消費者が勘違いしてしまうような表示が違反となる
誤解を恐れずに言えば、実際の商品・サービスの内容・取引条件を、消費者が勘違いしてしまうような表示であれば、表示規制の違反となってしまいます。景品表示法は消費者の保護を重要な目的の1つとする法律です。「そのようなつもりではなかった」、「わざとではない」としても、表示する側の意図が問われることはありません。専ら消費者の勘違いを生むようなものか否かが問題となります。
違反となる表示例
消費者庁が公表する「[事例でわかる景品表示法](https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling)」から、いくつか代表的なものを抜粋します。これらは、いずれも実際の処分例を踏まえたものとなっています。
なお、表示規制は、大きくは優良誤認表示と有利誤認表示に分かれるため、この分類に応じて例を挙げます。ただし、細かい知識となるため、この区別を知っていただく必要はありません。
優良誤認表示
商品・サービスの品質、企画などの内容の表示に関する規制です。
【食品】牛肉のブランド
実際には、国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、あたかも「国産有名ブランド牛の肉」であるかのように表示
【LED電球】LED電球の明るさ
実際には、全光束(光源が全ての方向に放出する光束の総和)が日本工業規格に定められた白熱電球60ワット形の全光束を大きく下回っているにもかかわらず、あたかも「白熱電球60ワット相当」の明るさであるかのように表示
有利誤認表示
価格などの取引条件の表示に関する規制です。
【食品】商品の内容量
実際には、他社と同程度の内容量しかないにもかかわらず、あたかも「他社商品の2倍の内容量」であるかのように表示
【歯列矯正】サービスの利用に必要な追加費用
実際には、別途、矯正装置の費用が必要であるにもかかわらず、あたかも、初診料や検査診断料などとして記載された「○○円」だけを支払えば歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示
実務的な留意点 ~あくまで消費者目線での判断を~
表示規制に違反する場合は、実際の商品・サービスの内容・取引条件と表示から読み取れる商品・サービスの内容・取引条件とが異なる場合です。上記の違反となる表示例のとおり、消費者庁は、「実際には、Aであるにもにもかかわらず、あたかも、Bかのように表示」したことが違反となったと説明しています。実際の商品・サービスの内容・取引条件=Aと、表示から読み取れる商品・サービスの内容・取引条件=Bの齟齬が問題となります。
そして、表示から読み取れる商品・サービスの内容・取引条件については、以下のように、消費者の目線に立って判断しなければならないことに十分な注意が必要です。
表示から消費者が受ける印象も重要であること
表示の文言それ自体を忠実に読み取って、何が商品・サービスの内容・取引条件かを判断することは、もちろん重要です。しかしながら、消費者が表示から受け取る印象も、商品・サービスの内容・取引条件かを判断するにあたって考慮されることに、注意が必要です。
茶の容器包装が問題となった事例ですが、次のような処分例があります。これは、消費者が表示から受け取る印象が重要である好例の1つです。
本件では、茶の容器包装に、次のような記載がありました。
「阿蘇の大地の恵み」という文字
日本の山里を思わせる風景のイラストの記載
この記載から、消費者庁は、商品の原材料が日本産である旨の文言はないにもかかわらず、商品の原材料が日本産であるかのように示す表示をしていたと判断しています。他方、実際は、商品の原材料の一部が外国産でした。そのため、消費者庁は、表示規制に違反していると結論付けました。
この例では、日本産・国内産であることを直接指し示す文言はどこにもありません。しかしながら、消費者が表示全体から受ける印象から、原材料が日本産であるとの表示をしたと判断したのだと評価できます。
業界用語と消費者の認識に齟齬があること
表示の文言それ自体を忠実に読み取るにあたっても、消費者の目線に立った判断が重要です。
ホテルの中国料理レストランにおけるメニュー表示が問題となった処分例があります。本件では、実際には「バナメイエビ」の料理を提供していたのに、「芝エビ」の料理だと表示して提供していたことが問題でした。このような事態が生じた背景として、中国料理においては、小さいエビを「芝エビ」という業界慣習があることから、「バナメイエビ」を使用していても「芝エビ」と呼んでしまっていたという指摘があります。
たとえ業界慣習があったとしても、消費者にとって「芝エビ」と「バナメイエビ」は異なるものといえます。これは、消費者目線に立った判断が必要な好例といえます。
他の表示規制の類型
優良誤認表示や有利誤認表示のほかの表示規制の類型として、たとえば、次の規制があります。
ステマ規制:広告・宣伝であることが消費者にとって分かりにくい形で広告・宣伝を行うこと(ステマ)への規制
おとり広告規制:販売する意思がない商品・サービスを広告に使い、顧客を誘い込むもの(おとり広告)への規制
特にステマ規制については、新しい規制であることから、執行が活発な領域であり注意が必要なため、別の機会に説明できればと思います。