ステマ規制とは?その重要性と規制の理由
今回は、ステルスマーケティング(ステマ)規制について説明をします。
これは、2023年10月から新たに規制対象となったもので、景品表示法の表示規制のうち、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」という告示により規制されるものです。
一般的にステマは、 消費者に広告であると明記せずに隠した販促・宣伝行為(ウィキペディアのステルスマーケティングの説明を参照)とされているようです。しかしながら、告示にしたがって執行はなされる以上、法令遵守の観点からは、告示の内容をきちんと理解することが大切です。
それでは、なぜステルスマーケティングは規制されるべきなのでしょうか?
消費者庁が公表する「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック」では、次のような説明があります。
極端な例ですが、ある商品の口コミで、10点満点中10点の評価が100個あり、1点の評価が10個である場合で、10点の評価全部が商品の販売者によるものであるときに、その事実を知っていれば、その商品を購入することはまずないと思います。しかしながら、その事実を知らなければ、とても魅力的な商品に見えることでしょう。このように不当な表示(広告)を規制するのがステマ規制です。
なお、ステマ規制違反の行政処分に関して、現在時点において、課徴金納付命令(一定の算式で計算される金額の納付の命令)はありません。措置命令という、違反行為の停止・是正や再発防止の実施を求める命令がなされるのみです。もっとも、新聞やニュースで報道されますし、消費者のECサイトへの信頼を大きく毀損するものであり、注意が必要な規制です。
実際の執行例
これまでの執行例を見る限り、露骨に違反となるもののほか、事業者においてもステマ規制の対象だという認識が甘かったと思われる事案があるため、代表的な2つの事案を紹介します。
Googleマップでの高評価投稿を条件に謝礼を渡したもの
次のように、ステマ規制違反が認定されたものがあります。
- インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者に対し、Googleマップ内のクリニックの評価として★5つ又は★4つの投稿すをすることを条件に、インフルエンザワクチン接種費用を割り引くことを伝えたことによって、★5つの口コミが投稿されていた。
- この投稿が、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、ステマ規制に違反する。
本件は、典型的なステマだといえます。このように、ステマ規制に違反すると詳細な手口が認定されるため、消費者からの信頼は相当大きく毀損されるものと思われます。
インフルエンサーの他のSNS上での投稿を自社サイトで引用するもの
次のように、ステマ規制違反が認定されたものがあります。
- インフルエンサーに対して対価を提供して、InstagramにchocoZAPに関する投稿することを依頼した。
- 上記投稿の抜粋を自社サイトに掲載したが、対価を提供することを条件に投稿されたものであることを明らかにしていなかった。
- 上記自社サイトにおける表示が、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、ステマ規制に違反する。
なお、Instagramの投稿自体にはchocoZAPとのタイアップ案件である旨の表示があったようです。自社サイトのみではタイアップ案件であるとは分からない以上、ステマ規制に違反すると判断された事例となります。自社サイトでの掲載である以上、ステマ規制の適用を受けないと勘違いする方も多いので、注意が必要です。実際、類似する違反による執行例が既に複数あります。
ステマ規制の内容を深掘りする
ステマ規制の告示自体は、とてもシンプルなものです。一度読んでみましょう。
次のように2つの要件に分けて議論されるのが一般的です。
- 事業者の表示(事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示)
- 判別困難性(一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの)
事業者の表示
ステマ規制の典型例は、①インフルエンサーなどの第三者が行うSNSで投稿する場合や、②自社従業員がその身分を秘して自社商品を紹介するという場合です。それにもかかわらず、事業者の表示が要件だとすれば、いずれも事業者の表示でなく、告示の定めはおかしいのでは?という疑問を抱かれるかもしれません。
ここで問題とするのは、事実としては事業者と別の者が行う表示(広告)に対し、事業者の表示だと法的に評価できるかというものです。法律の議論では、このように、実際に生じている状況そのままの見え方と異なる評価をする場合があります。
消費者庁は、事業者の表示に関する評価に関し、相当な分量で説明をしています(「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準)。ここでは、ポイントを絞って解説をします。
第三者が表示させる場合
インフルエンサーなどによるSNSの投稿
自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合は、事業者の表示ではないと評価されます。もっとも、どのような場合に「自主的な意思」があるとされるかは、難しい判断が必要となります。
ECサイトにおけるレビュー(評点)の投稿
上記と同様、自主的な意思に基づくものであれば、事業者の表示ではないと評価されます。
アフィリエイト広告
原則として事業者の表示であると評価されます。
記事広告(通常の記事と同じような体裁で媒体に出稿して掲載される広告)
事業者の表示であると評価されます。なお、媒体側の自主的な意思で企画編集されたといえるならば、たとえ商品の供給事業者の協力があったとしても、事業者の表示ではないと評価されます。
自社従業員が表示する場合
自社従業員が表示をする場合は、その従業員が商品の販売促進をすべき立場にあるか(→事業者の表示肯定)、否か(→一般人と同様の立場での表示ならば、事業者の表示否定)で判断が分かれます。
判別困難性
「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」と認められないためには、広告であることを明瞭に示す表記が必要です。各種SNSにおいて、「プロモーション」、「PR」、「企業案件」、「タイアップ」などいう表示を用いているのは、広告であることを明瞭に示すためです。
なお、SNSの投稿の抜粋を自社サイトに掲載する場合においても、SNSでの記載とは別途、広告であることを明瞭に示す必要があるのは上記のとおりです。