商品不具合のトラブル対処に品質保証条項を

食品や家電製品といった様々な商品を他者に販売する企業が遭うトラブルとして、商品の不具合に関するものが挙げられます。日頃様々なご相談をいただく中でも、商品の不具合に関するものは、比較的温度感が高いものとなっています。もちろん、「良い商品を作っているから大丈夫」と言いたいところだとは思いますが、現実に多額の損害賠償や返品トラブルが生じています。

そこで、今回は、このようなトラブルを未然に予防するにあたって何をしておくべきか、品質保証条項を中心に説明できればと思います。

品質保証条項とは?

契約書において、商品が所定の仕様・品質・性能等を有することを保証するものが、品質保証条項です。
たとえば、次のような条項が、品質保証条項となります。なお、あとで述べるとおり、品質保証条項は、残念ながら「これが正解」という定めはありません。この条項例を実際に利用することは控えてください。

上記の条項例も踏まえつつ、以下では説明したいと思います。

契約不適合責任と品質保証条項の関係

品質保証条項は、契約不適合責任(2020年施行の民法改正後のもので、古くは瑕疵担保責任と呼ばれていたものです。)と密接に関連するものとなります。品質保証条項例の第2項でも、契約不適合責任と結びつけ、品質保証違反による責任と契約不適合責任が一致するような定めをしています。

契約不適合責任は、目的物が「契約の内容に適合しない」ことをいいます。これは、「商品が、契約上合意された所定の仕様・品質・性能等を備えていないこと」といって差し支え有りません。そのため、品質保証条項と契約不適合責任は、同じ状況=商品の不具合に関する責任を問題とするものといえます。

それにもかかわらず、契約書において、品質保証条項と契約不適合責任の関係が明瞭でないまま定められている例をまま見かけます。双方の関係性を意識した契約条項を定める必要があります。基本的には、いずれかの対応をとる必要があります。

  • 品質保証条項において必要な権利・義務を網羅し、契約不適合責任は品質保証条項に定めるものに限るとすること
  • 品質保証条項において必要な保証範囲のみを定め、品質保証違反の効果は契約不適合責任の条項に委ねるとすること(条項例はこちらの方向です。)

保証される品質=契約不適合の範囲をどのように定めるか

それでは、品質保証条項の一番重要なポイントである、保証すべき品質はどの範囲で定めるべきでしょうか?まずは、以下の一般論がいえます。

  • 売主の目線では保証すべき範囲が狭い方がよく、買主の目線では広い方がよい
  • 売主としては、自社でコントロールができる事項か、又は他社に責任追及ができる範囲で保証するのがよい
  • 前者は、特に法令遵守や権利の非侵害について、注意が必要です。条例や外国の法令、知らない業界の自主基準も含めて保証するのか、留保なく全ての権利の侵害がないと保証してしまってよいかは、慎重な検討が飛鳥です。
  • 後者は、特に商社において検討すべき事項であり、メーカー保証の範囲内で責任を負う等の定めをすることが適切な場合があります。
  • 仮に自社でコントロールできない事項+他社に責任追及ができない範囲を保証する場合、それは自社に残存するリスクであるため、適切に事業判断を下す必要があります。

そのほか、保証範囲を考えるにあたって、いくつかの視点を提供したいと思います。

商材そのものの性質や想定される用途の考慮

当然ですが、食品に関する品質保証と、家電製品に関する品質保証では保証すべき範囲が異なってきます。食品であれば、原材料が何であるか、また、社会通念上食品として市場に流通し得る品質を備えていることなどが保証事項の候補として挙がってきます。他方、家電製品であれば、取扱説明書にしたがった利用が可能であることは保証することが考えられ、消耗品の劣化や改造等の不適切な使用は保証外となることが多いです。

また、商品が他社の製品に組み込まれる場合と、商品がそのまま直接一般消費者に販売される場合とでは、保証範囲が異なってきます。前者だと、商品自体が市場に流通し得る品質を有していることについての保証は不要といえます。

ほかに、たとえば医療機器そのものや、医療機器に組み込まれる製品であれば、人の生命・身体に関わるものであり厳しい品質基準が要請され、契約条も品質保証として組み込まれることが多いといえます。

このように、品質保証の範囲を定めるにあたっては、その商材・取引の性質に応じた個別具体的な判断が必要になってきます。

買主による検収時の品質調査義務の考慮

多くの事業者間取引においては、納品にあたって検収を実施することがあります。この検収は、形骸化していることもあるものの、通常、商品が所定の仕様・品質・性能等を備えているかを確認するための手続として位置づけられています。そのため、検収において発見できるような商品の不具合は、保証の範囲外とすることが考えられます。

なお、2020年施行の民法改正前においては、検収において発見できるような商品の不具合に関して売主は責任を負わないという定めとなっていました。しかしながら、改正後にこの要件は文言上消滅しています。「契約の内容に適合しない」という判断の際に考慮されるという指摘があるものの、不透明な状況です。

保証期間の考慮

保証期間も、保証範囲を検討するにあたって重要です。どの時点(起算点)から何年・何ヶ月(期間)保証するか、あまりにも長期間であれば、売主としてはいつまで経っても責任を負う可能性があるため、可能な限り短期間で定めることを検討すべきです。

改正前後の民法(商法)の定めや他社例を参考に、定めていくこととなります。もちろん個別具体的事情に応じて変わりますが、商品を受領した時を起算点とし、3ヶ月~1年程度の間で定めることが多いのではないかと思われます。

参考:民商法の定め

民法(現在)民法(改正前)商法
期間1年1年6ヶ月
起算点買主が不適合を知った時買主が瑕疵を知った時商品を受領した時

品質保証違反=契約不適合がある場に買主が何を請求できるか

民法上、契約不適合責任としては、次の事項が定められています。このほか、実務的には、買主から、品質保証違反があった際の監査権(工場等に立ち入り、原因究明等ができる権利)を要請されることがあります。これらのうち、いずれの権利を認めるのか、適切にドラフティングすることが重要となります。

  • 追完請求権
    (商品の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しの請求権です。)
  • 代金減額請求権
  • 損害賠償請求権
    (損害賠償の範囲を制限することが重要です。)
  • 解除権

各請求権に関して細かな要件の議論が考えられますが、複雑になりますし、今回は説明を省略させていただきます。ご依頼いただけましたら、もちろんこのあたりの要件も踏まえてアドバイスさせていただきます。

製造物責任と品質保証条項

商品の不具合によって、他人の生命、身体又は財産に被害があった場合、製造物責任法上の製造物責任が生じるという問題が挙げられます。一般に、品質保証条項を作り込んでも製造物責任リスクを回避することはできません。そのため、製造物責任保険によりリスク転嫁を試みることが重要となります。

まとめ

品質保証条項は、各商材・取引の性質に応じた個別具体的な判断が必要となるため、法律の専門家たる弁護士のみならず、商材特有のリスクを把握している品質管理部門等の協力により、適切にドラフトすべきものとなります。当事務所においてアドバイスできますので、ご遠慮なくご依頼いただければと思います。

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