勝訴しても回収できなければ意味がない、財産が分からなければ意味がない
取引先が売掛金を支払ってくれないため、裁判を起こし、見事に勝訴判決を勝ち取った。
支払いが滞ったときのために、事前に公証役場で「公正証書」を作っておいた。
事業者のみなさまにとって、ここまでは完璧な流れかもしれません。しかし、相手が素直に支払いに応じない場合、勝訴判決や公正証書はそれだけでは意味がありません。相手の財産を差し押さえて、はじめてその全部又は一部が回収できます。これは、みなさまが勘違いしがちな重要な点です。
さらに、相手の財産を差し押さえるには、「どこの銀行の何支店の口座か」、「どこにある不動産か」などを自身で調査・発見し、申し立てる必要があります。ただ、他人の財産状況を外から正確に突き止めるのは至難の業です。しかしながら、国は何もしてくれません。これも、勘違いしがちな重要な点です。
今回は、後者に関し、財産を調査・発見するための重要な方法の1つであり、民事執行法に定められる「財産開示」のポイントをお伝えします。
「財産開示」とは何か?
財産開示とは、一言で言えば、「裁判所が債務者(お金を支払うべき人)を呼び出し、自分の財産を自ら白状させる手続」です。
債権者(お金を受け取る権利がある人)からの申立てを受けた裁判所は、債務者に対して「財産開示期日」という呼び出しの日を指定します。債務者は、事前に自分の財産目録を提出した上で、当日は裁判所に出頭し、自身の財産(預貯金、不動産、勤務先など)について嘘偽りなく話す(専門的には陳述といいます。)必要があります。債権者は、この財産開示期日において、債務者に対して質問をすることができます。
財産開示手続を利用できる条件
財産開示手続を利用するためには、金銭債権者において、概ね次の条件を満たしている必要があります。
- 判決(確定していない場合でも仮執行宣言という文言が記載されていれば足ります。)、金銭の支払等を目的とする公正証書など(専門的には債務名義といいます。)があること
- 債務名義に執行文が付与されていること(裁判所に対して一定の申立てを行うことが付与されるものです。)
- 金銭債権者が知っている財産を差し押さえても、満足する支払が受けられないこと
時々勘違いがあるのですが、債務名義が必要なため、基本的には裁判で勝訴した債権者が実施できる手続であるとご理解ください。
本当に財産が開示されるのか?
財産開示手続は、数年前までは我々弁護士の間では「使ってもあまり意味がない制度」と言われていました。財産開示期日に出頭しなくても30万円以下の過料という罰金が課せられるだけでした。この過料は、歩きたばこをして条例違反となった場合に支払うこととなるものが代表的なもので、刑罰ではありません。そのため、ペナルティが甘く、より多額の金銭債権の開示手続においては、「30万円を払った方がまし」であり、実効性が欠けるものだったといえます。
他方、現在は、正当な理由のない不出頭や、財産開示期日における虚偽の陳述に対しては、6月以下の拘禁刑(懲役)を含む刑事罰が科せられます。したがって、制度上は、実効性が確保されるようになりました。ただし、依然として不出頭は相当数あるという現状には注意が必要です。
もっとも、刑事罰が設けられたということは、警察に告発し、捜査を進めてもらうことで、財産開示を促すことができるようになったことを意味します。実際、このような方法を活用することで、財産開示に至った例もあります。
このように、ある程度使い勝手は上がったものの、複数の手続を実施することではじめて開示される「可能性」があるといったもので、使い勝手がよいとまではいえないことに注意は必要です。
重要な注意点:相手が「本当に一文無し」なら回収はできない
この手続はあくまで「自分の財産を自ら白状させる手続」です。債務者が本当に破産寸前で、文字通り1円も財産を持っていない場合、「ない袖は振れない」という結論になってしまいます。
確実な回収ルートの検討を
ビジネスにおいて、売掛金や未収入金を回収できないということは、自社のキャッシュフローを直撃する死活問題です。
「裁判に勝ったのに相手が逃げ回っている」「公正証書はあるのに連絡が取れない」という場合でも、現在の財産開示手続を経ることで、隠された財産を特定できる可能性があります。
ただし、これらの申立てには、複雑な法的要件のクリアや、裁判所とのやり取りが必要不可欠です。
せっかく勝ち取った権利を諦めてしまう前に、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。貴社の確実な債権回収のサポートをいたします。