BitTorrent(ビットトレント)系のP2Pソフトウェアによる著作権侵害について

BitTorrent(ビットトレント)系のP2Pソフトウェア(ファイル共有ソフトウェア)による著作権侵害について

はじめに

BitTorrent(ビットトレント)は、たとえばOS(オペレーティングシステム)のような大容量のファイルをインターネットで配布/共有する際に、特定の配布サイトに負荷が集中するのを軽減して、素早くファイルを配布/共有することを目的に開発されたP2Pソフトウェアです。

技術的には有意義なBitTorrentによるファイル共有ですが、こうしたBitTorrent(およびμTorrentなど、その亜種)を利用して著作権侵害(著作権者に無断で、著作物である動画等をファイル共有)してしまい、著作権者から利用者のプロバイダーに対して発信者情報開示請求がされるケースが増えています。

侵害をしてしまった人の多くは、プロバイダーから意見照会書が届いたタイミングでこれを知り、どう回答したらよいのか?今後どうなるのか?という部分に不安を感じ、相談に来られています。

そこで以下では、BitTorrentで違法なファイルを共有することの法的な意味とその後の対応について解説します。

BitTorrnetによるファイル共有はどんな権利を侵害しうるのか

「自分はダウンロードだけしているつもりで、アップロードまでしているとは知らなかった」と、相談された方から言われることが多いです。

それは事実なのだと思いますが、とはいえ、対象となるファイルが、誰かの「著作物」であった場合、その著作権者の承諾がない限り、それをダウンロードすることは著作権法上の「複製権侵害」にあたります。

また、ダウンロードした後で、これをアップロードすることは「公衆送信権」/「送信可能化権」などの侵害にあたりえます。

なお、「あたりえます」と微妙な言い方になるのは、ビットトレントのプロトコルの仕様上、必ずしもダウンロードした量と同じだけをアップロードしたことになるとは言い切れないなど、法律の要件にあてはめると、厳密には色々と検証の余地があるように思われるためです。

長時間使用していると多額の損害額が推定されうる

著作権侵害の場合、刑事裁判の可能性も無いわけではありませんが、多くの場合は民事裁判が主になると思います。

そして、著作権者が、著作権を侵害した相手に請求できることは2つあります。1つ目は差止請求(たとえば、違法な複製物をこれ以上共有されないように削除しろと請求すること)であり、2つ目は損害賠償請求(金を払えと請求すること)です。

個人がビットトレントで著作権侵害をしたような場合、差止めの方は問題とはなりにくく、主には損害賠償請求が問題になります。そして、著作権法114条には損害額の推定規定があり、ざっくり言えば、たくさんの人へアップロード(公衆送信)して共有するほど損害額が高額になりえます。

そのため、自分のPCでビットトレントのソフトウェアを長時間起動しっぱなしにしていた場合、思いがけないほどの多人数へ公衆送信してしまっており、多額の損害額が推定されるリスクが生じえます。

意見照会書後の対応

具体的な対応は、意見照会書を受け取った方が、自身の行為を認めるのか、人違いだと争うのかで全く異なってきます。そのため、まずは認めるのか否かをご自身で決めていただく必要があるかと思います。

その後は、認める場合も争う場合も、BitTorrentによる著作権侵害紛争については、通常のWEBやSNS上でなされた著作権侵害紛争とでは、法律上の手続きや技術的観点において、共通する部分と、争点が異なる部分とが生じ得ますので、ご自分であれこれ検索するよりは、一度、弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか? 当所でも初回無料でオンライン法律相談が可能です。

おわりに

つい安易な気持ちで違法行為をしてしまった方がプロバイダーから手紙を受け取った時の不安な気持ちは大変なものだと思います。当所へ相談に来られる多くの方は、「ファイル共有ソフトウェアはもう懲り懲りだ」と言われます。

ただ、BitTorrentを含め、P2Pによるファイル共有の実装なり技術自体は良いも悪いもない「ただの道具」ですので、世の中をより良くする便利な使い方も勿論あります(刃物や自動車と同じです)。

当事者となられた方にとっては、今はそんなことを考える余裕はないかもしれませんが、一旦、当該紛争に決着をつけて落ち着いたあとは、便利な道具を正しく使うようにリテラシーを高めていく具体的行動をとることが、次の過ちを防止する上でも大切なことではないかと思います。

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伊藤 英明

Hideaki Ito

弁護士 / 弁理士 / 博士(情報学)
日本工業所有権法学会, 著作権法学会, 情報ネットワーク法学会

力新堂法律事務所に所属し弁護士業を営む傍らで、都内IT企業に勤務しています。データを見て推測するのが好きです。

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