はじめに
2022年2月25日、いわゆる「死にゲー」で知られるフロムソフトウェアから「エルデンリング」(という名前のゲーム)が発売されました。この文章を書いているのが2月28日(月)なのですが、私自身は土日で16時間ぐらいプレイしたものの、ゲーム進行度は、まだ序盤も序盤というところです(経験値稼ぎだけは頑張るタイプ)。
この「エルデンリング」の発売にあたっては、Twitterで、ゲーム動画配信をフロムが禁止した?!的な投稿が話題になりました。その後、フロムソフトウェアから、「動画・画像の投稿に関するガイドライン」という形で公式見解が発表されました(動画配信・画像投稿に関するガイドライン | FromSoftware – フロム・ソフトウェア)。
詳細は上記ガイドラインを読んでいただくとして、ざっくりといえば、各自で付加価値をつけた常識的な内容のゲームプレイ動画であれば、YouTube等、JASRACと音楽に関する利用許諾契約を締結している動画共有サイトに投稿してもOK(ただしスパチャ等は禁止)ということになっているようです。
上記内容に、私自身としては非常にホッとしました。以下では、①平凡かつ、へぼゲームプレーヤーである私がなぜホッとしたのかという点、②フロムソフトウェアの今回のガイドラインから、「死にゲー」というジャンルを市場で盛り上げるためにあるべき著作権と契約の関係について、勝手かつ無責任に検討してみます。
YouTubeの動画が、折れた心を繋ぎ止めてくれたという事実
私はデモンズソウルからソウルシリーズを(一応)プレイしています。ちなみに「ソウルシリーズ」というのは、フロムソフトウェアの過去作には「〜〜ソウル」という名前のゲームが多かったため、一連のシリーズを総称する際の慣用表現的なものです。
このソウルシリーズは「死にゲー」と言われており、何度も何度も何度も死んで覚えていくタイプの難易度の高いRPGです。当然、途中で心が折れて挫折するケースもあり、アクションが苦手な私などは、魔法でアクションを回避しやすかったデモンズはなんとかなったものの、以後のダークソウルでは、軒並み一度は心が折れてプレイを中断しています。
そんな私ですが、一応なんとか全シリーズについて、最低1周は終えていますが、それはネットの情報、特に解説動画のおかげであったと断言できます。
高難易度のボス戦での、ボスの行動パターンや自身の立ち回りなど、言葉にすると冗長過ぎて余計混乱することも多々ありますが、動画で「こういう攻撃がきたときだけR1で、それ以外はひたすらローリング回避」みたいに見せてくれると、非常にわかりやすく真似しやすいと実感しています。
今作のエルデンリングも事前予約していたため、もし本当にプレイ動画の公開を禁止されてしまったらどうしよう(完全に心が折れそう)という心配がありました。
そのため、フロムソフトウェアが公式にガイドラインを公開され、おそらくは従来通りのプレイ動画で「勉強」させて貰えそうと分かった時は、ホッとしました。
尖ったジャンルの裾野を広げるツールとしてのゲーム動画
今更ですが、前提として、一般にゲームの映像は映画の著作権(に類するもの)等として保護されると考えられます。そして、著作物を「著作者に無断で」複製したりネット配信したりすることは、著作権法に違反する可能性が高いです。
ここでのポイントは「著作者に無断で」するとダメだけれど、著作者が良いというなら、問題ないということです。
(当たり前といえば当たり前なのですが、ダメだと禁止する根拠は著作権法という法律である一方、良いと許諾する根拠は(主に)契約という当事者の意思によるという点で、法律的には色々と考えるべきことはあります。)
いずれにしろ、私が実感として感じるのは、「死にゲー」という尖ったジャンルの裾野を広げ発展させたことに対して、YouTube等の動画の寄与は小さくなかったんじゃないかな、ということです。
これが、ふつうのゲームであれば、ゲームの著作権者が、プレイ動画がネット上へアップロードされるのを(黙示的であれ)承諾する理由としては、おそらくゲーム未購入者に対して内容を周知するためのプロモーション的な期待が大きいのかな、と思います。
しかし、死にゲーであれば、ゲーム購入者こそが解説動画を必死で見ることも想定されます。そのため、制作側は、ゲーム購入者が解説動画を見る可能性も考慮して高難易度のゲームバランスを追求でき、プレイヤーとしても、自分の好みに必要に応じて解説動画を見たり見なかったりすることで難易度を調整できるはずです。
著作権による禁止と契約による許諾のバランス
以上は私の勝手な考察ではありますが、今回、フロムソフトウェアが公開された「ガイドライン」を読みながら、著作権(を含む知的財産権)を事業に繋げてお金にするには、もちろん著作権の保護は大切ではありますが、それをふまえた独自のビジネスモデルや、それを支えるユーザーコミュニティを構築するための契約(ガイドライン/利用規約など、呼び方は問わず)をどれだけ具体的に考えられるかが重要だなと、改めて感じた次第です。