会社の破産・清算

会社の破産・清算

会社の資金繰りが悪化して経営継続が難しくなったら、破産や清算も視野に入ってくるでしょう。事業に将来性があるなら、民事再生手続きや私的整理を利用して会社を残す方法も選択できます。

今回は廃業を検討する経営者の方に知っておいて頂きたい破産や清算の手続きについて、弁護士が解説します。

事業を継続すべきか検討する

会社の財務状況や資金繰りが悪化し、経営者として「これ以上継続できないかもしれない」と考える状況に陥っても、必ずしも廃業の必要はありません。

まずは事業を継続すべきかどうか、見極めましょう。

その際ポイントとなるのは以下のような視点です。

業種や市場に将来性があるか

まずは会社が取り扱っている業務内容や業種が問題となります。今、世の中はものすごいスピードで移り変わっており、旧来のやり方が通用しなくなっている業種がたくさんあります。これまでは需要があったけれどAIなどの技術革新によって不要となる事業も出てくるでしょう。
自社の主要取扱い業務が斜陽であれば、継続しても将来はないかもしれません。そうであれば廃業を選択するのが良いでしょう。反対に将来伸びる可能性の高い業種であれば、今は苦しくても耐えて将来に期待をかける価値があります。

問題点を改善可能か

次に自社の抱える問題点を明らかにしましょう。ひと言で「経営が苦しい」といっても、さまざまな状況がありえます。

  • 販管費がかかりすぎている
  • 在庫が多くなりすぎている
  • 不良債権が多い
  • どんぶり勘定である
  • 投資資金を回収できていない
  • 不採算部門による影響が大きい
  • 後継者がいない
  • 反社会的勢力とのつながりがある

自社の問題点を洗い出し、解決可能な問題かどうかを検討しましょう。改善が可能であれば事業を残せますが、不可能であれば廃業に向けて進めるべきです。

債務を圧縮したら弁済していけるか

多額の負債が経営を圧迫している場合、私的整理や民事再生を利用すればある程度の圧縮は可能です。ただ、圧縮されてもそれさえ返済できなければ、これらの手続きでは解決できません。
自社の事業にどのくらいの収益性があるか、将来も収益力を保ち、あるいは高めていけるのかを検討しましょう。

後継者がいるか

経営者が高齢になって経営の継続が難しくなっている場合、後継者がいれば事業承継によって会社を残せます。子どもに承継させるのが難しければ、従業員や役員、M&Aを利用して他社へ事業承継させる方法もあります。
後継者不足で廃業を検討しているなら、別の方法での事業承継を視野に入れてみてください。

会社のたたみ方、廃業の方法

会社を廃業するときには、状況に応じて以下の3種類の方法から選択しましょう。

清算

清算は、会社が資産超過のときに適用する通常の廃業方法です。「清算人」を選任し、資産を換価して債権者へ配当し、株主総会の承認を経て解散結了登記をすれば、会社を閉鎖できます。
通常清算の場合、会社の代表取締役が自ら清算人として廃業の手続きを進められます。
裁判所への申立も不要で自分たちだけで解決できるので、負担も小さくなるでしょう。

特別清算

特別清算は、会社に債務超過の疑いがあるときに廃業する方法です。特別清算人を選任して手続きを進めますが、その際裁判所への申立が必要です。裁判所の監督のもと、特別清算人が財産の換価や債権者への協議、和解などの手続を進めます。最終的に和解や協定が成立して支払を行い、登記が完了すれば会社が閉鎖されます。
特別清算の場合、代表取締役自身が特別清算人となることも可能ですが、裁判所への申立が必要です。債権者の同意を得られない場合や資産の額が著しく少ない場合などには「破産」に移行する可能性もあります。そうなったら代表取締役の手から離れて「破産管財人」が手続きを進めます。
また裁判所への申立には大変な手間が発生するので、自分たちだけで進めるのは難しく、弁護士によるサポートが必須となるでしょう。

破産

破産は債務超過や支払不能となった企業が廃業するための手続きです。会社が破産すると、会社の資産と負債を清算して最終的に会社を消滅させます。
破産の手続きを進めるのは、裁判所から選任された「破産管財人」であり、会社の代表取締役ではありません。
裁判所への申立が必要で、予納金などの費用もかかります。
自分たちだけで破産手続きを進めるのは困難なので、弁護士に依頼しましょう。

事業を残す方法

経営状態が悪化しても、再生型の倒産手続きを利用すれば会社を残せます。

典型的な再生型の倒産手続きは、以下の2つです。

私的整理

私的整理は、債権者と個別に交渉をして支払額を減額してもらう方法です。
主な交渉先は金融機関となります。
あまり大幅な減額は難しいですが、裁判所への申し立ても不要で「倒産」というマイナスイメージもつきにくく、柔軟に対応しやすいメリットがあります。

民事再生

民事再生は、裁判所へ申し立てて再生計画を立案し、負債を大幅に圧縮してもらう手続きです。債務の減額率が高いので、負債額が大きく膨らんでいる場合でも再生できる可能性があります。裁判所が関与しますが、基本的には申し立て会社の経営者が自ら手続きを進められるのもメリットとなるでしょう。

ただし一定以上の債権者の同意がないと再生計画案が認可されません。また裁判所を利用するので手続が重厚となり、時間も労力も費用もかかります。

事業承継について

「後継者がいない」という理由で廃業を検討しているなら、M&Aを利用した事業承継(会社売却)を利用してみてください。債務超過の企業でも、状況によっては売却が可能です。

M&Aとは、他社に自社を買い取ってもらう企業再編の手続きです。株式譲渡や事業譲渡を行い、買い手企業に事業を引き継いでもらいます。
優良企業であれば、オーナーの予想以上に高額な価額で買い取ってくれる企業も現れるでしょう。黒字経営なのに後継者不足で廃業するのはもったいないので、ぜひ検討してみてください。

破産・清算の流れ

会社を清算・破産するときの流れをパターン別にご説明します。

通常清算の場合

資産超過の会社が廃業するときの通常清算の手続きは以下の通りです。

株主総会で解散決議を行う

まずは株主総会特別決議で会社の解散を決定しましょう。その際「清算人」を選任します。ただし、あらかじめ定款で清算人の選任方法が定められていたら、指定される人が清算人となります。

解散や清算人の登記

株主総会特別決議で解散が承認されたら、2週間以内に法務局で登記をします。

官報公告

次に官報公告を行います。官報公告とは、政府の発行する「官報」に会社の解散について掲載することです。会社の解散を債権者に知らせて一定期間内に債権届出を促すために行います。

財産目録、貸借対照表の承認

財産目録や貸借対照表を作成し、株主総会で承認を受けます。

資産売却や債権回収

不動産や在庫商品などの資産を売却し、現金化していきます。未回収の売掛金や貸付金などの債権も回収を進めましょう。個別に資産を売却するのではなく「事業譲渡」する方法もあります。

債務の弁済

資産売却等によって得られた資金で負債を弁済します。通常清算を終えるには、すべての負債を支払わねばなりません。弁済資金が足りない場合、特別清算か破産が必要となります。

残余財産の分配

債務を完済して資産が残ったら、株主へ分配します。

株主総会で決算報告の承認

残った財産、株主への配当額、経費などを記載した決算報告書を清算人が作成します。
株主総会決議で承認されたら、会社は消滅します。

清算結了登記

清算手続きが終了したら「清算結了登記」を行います。これにより、会社の商業登記簿が閉鎖され、会社が消滅した事実が世間的にも明らかになります。

特別清算の場合

株主総会で解散決議を行う

特別清算の場合も、まずは株主総会特別決議で「解散決議」をしなければなりません。このとき「特別清算人」も同時に選任するのが一般的です。

特別清算の申立てと開始決定

特別清算の場合、裁判所への申立が必要です。
裁判所が特別清算手続きの開始決定をすると、手続きが開始されます。

債権届出の公告・催告

会社の債権者に対し、債権届出を促すために官報公告をします。会社が把握している債権者には、個別に連絡して債権届出を促します。

財産調査、換価

特別清算人は財産調査を行い「財産目録」を作成して裁判所に提出します。また資産を売却したり債権回収したりして、弁済資金を集めていきます。

債務の弁済(和解・協定)

特別清算には和解型と清算型の2種類があります。
和解型の場合、すべての債権者と個別に合意して弁済をします。
協定型の場合、債権者集会を開いて承認を得た上で、裁判所の許可を得て債務を弁済します。

清算結了の登記

負債の弁済手続きが終了したら、裁判所の決定によって特別清算手続きが終了し、会社が消滅します。
法務局で清算結了登記が行われて、会社登記簿が閉鎖され、すべての手続きが終わります。

破産の場合

取締役会決議

取締役会が機能している場合、取締役会を開催して破産を決定します。取締役会を開けない場合には個々の取締役が破産を申し立てることが可能です。

弁護士に依頼

弁護士に破産申立を依頼しましょう。弁護士が債権者へ受任通知を発送すると、会社への直接の取り立てが止まります。

申立

準備ができたら、管轄の裁判所へ破産申立を行います。

破産手続き開始決定、破産管財人の選任

裁判所で「破産手続き開始決定」がおり、破産手続きがスタートします。同時に破産管財人が選任されます。

破産管財人との面談、財産換価

破産管財人と面談し、これまでの経過などを話して財産の資料を受け渡します。その後葉酸管財人が財産の換価を進めます。

債権者集会

破産手続きの進行中、1か月に1回程度債権者集会が開かれます。申立人や代表取締役も出頭しなければなりません。

配当

換価が終了すると、破産管財人が債権者へ平等に配当を行います。

終結

破産手続きが終結し、会社は消滅します。会社登記簿も閉鎖され、対外的にも会社の消滅が明らかになります。

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茅根 豪

Go Chinone

兵庫県弁護士会業務委員会等/甲南大学知的財産法研究会(事務局)/甲南大学法科大学院兼任教授(2020年・企業法務論)

弁護士を志す前は、都心の事業会社で不動産ビジネス等を経験しました(宅建士有資格者)。そのためか不動産関連のご相談を多く受けます。現在は、事務所のメンバーや他業種の方々と一緒に、税務、労務、広告規制、マーケティングなどについての勉強会を開催しています。弁護士業以外の活動としては、大阪のトレーニングジムで運動機能の改善指導を行ったり、東京で定期開催される政治・経済の勉強会等に参加しています。法律のみならず、広く社会の諸分野についても見聞を拡げていきたいと思っています。

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