ECサイトの規約:条項解説(法務担当者向け)【続き】

前回の続きです。必要に応じて読んでいただく程度で結構です。

契約解除に関する定め

条項例

たとえば、ジャパネットたかたのオンラインショッピングに関する利用規約では、次のような定めとしています。

説明

契約解除に関しては、次のポイントを守って定めておくのがよいと考えます。

解除の手続=無催告解除とする

条項例のとおり、事前通知することなく解除をすることができる旨を定めておくべきです。このような定めがない場合、催告(違反状態の是正の通知)をした上で、相当期間が経過しなければ、解除の効力は生じません。即時解除をすべき事態もあるでしょうし、催告が不要である旨の定めが必要です。

解除以外の措置を可能とする

規約違反がある場合、様々な制裁をお客様に課したいということも多いと想定します。そのため、解除事由がある場合においては、実際の売買契約の解除以外に、サービスの提供の停止や他の適切な措置ができるよう定めておくべきです。

解除事由

禁止事項と同様、他社を参考にしつつ、解除事由を定めていくことになります。なお、一般的にあった方がよいと考えている解除事由は以下のとおりです。

  • 規約違反や法令違反がある
  • 有効な配送先でない(配送しても受け取りがない)
  • クレジットカード会社の支払承認が受けられない
  • 反社会的勢力であることが判明した

損害賠償責任の制限に関する定め

条項例

たとえば、ZOZOTOWNサービス利用規約では、次のような定めとしています。

説明

概要

原則、事業者が契約違反をした場合、事業者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。通常の実店舗での売買は、この原則ルールが適用されます。

他方、ECサイトにおける売買では、条項例のように、次の2つの観点から、利用規約において責任を限定することが多いように思われます。これは、実店舗での売買とは異なり、責任を制限する旨の条項をあらかじめ提示できるためだと思われます。

賠償すべき損害の種類

民法上、賠償責任が生じるのは、契約違反によって通常生ずべき損害(通常損害)+当事者がその事情を予見すべきであった、特別の事情によって生じた損害(特別損害)です。

ただし、規約上、別途のルールを設けることができます。そのため、実務的には、次のような損害は、賠償責任から除くことが多いように思われます。条項例では、「現実」「通常」「直接」の損害に限るとし、「付随的」「特別」「間接的」損害を除外しています。

  • 特別損害
  • 間接的損害
  • 付随的損害
  • 逸失利益
    ※ 逸失利益は付随的損害に該当すると思われるものの、日本の民法は通常損害・特別損害の区別しかないため、明記するのが望ましい。
賠償すべき損害額

民法上、通常損害と特別損害は賠償の対象であり、その額に限定はありません。

ただし、規約上、別途のルールを設けることができます。そのため、条項例のように、売買代金を上限とする例があります。もっとも、実店舗の売買の場合と比較して賠償範囲が限定されすぎてしまうためか、上限は定めない例も相応にあります。

消費者契約法による制限

消費者契約法は、上記のような損害賠償責任の制限の定めが、一定の場合に無効であると規定します。詳細な説明はしませんが、to CのECサイトについては、免責条項の有効性が次のような関係となっています。

故意重過失軽過失
全部免責無効無効無効
一部免責無効無効有効

軽過失だと有効だといっても、さらに製造物責任(特に人身損害に関する責任)に関しては免責規定が公序良俗違反だと考えるのが一般的ですし、なお留意が必要です。

専属的合意管轄裁判所に関する定め

条項例

簡単な条項例を挙げておきます。

説明

次のように、本記事を書くにあたって合意管轄の定めが誤りである例が散見されました。コピペで対応する際は、注意が必要です。

  • どのような法律関係に基づく紛争か明らかでないもの
    「本規約に関する……紛争」に相当する箇所が民事訴訟法上必要となるものの、これがない。
  • 「第一審」の「専属的合意管轄」であることが分からないもの
    「第一審」という記載が抜けている。また、単に「合意管轄」とのみで専属的か否か分からない。

合意管轄の定めは、実際に紛争となった際に、どこの(地方 or 簡易)裁判所に訴えられるかというものです。日本全国の地方裁判所(簡易裁判所ではなく!)のうち、自身のアクセスが近いところを指定するのがよいと考えます。もっとも、近時は、かなりの手続がウェブで実現可能となっています。数年前に比べれば、専属的合意管轄裁判所に拘る必要性は、かなり低下してきています。

なお、お客様の不便などを踏まえて、実際には別の裁判所で裁判となることもあります。

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