思わぬ形でアカウント停止や法的トラブルに!?
事業者のみなさまがECサイトやフリマアプリでの販売をしている際に、知らず知らずのうちに商標権侵害しており、ある日突然アカウントが停止されたり、法的トラブルに巻き込まれたりするリスクが潜んでいます。
近年は、偽造品や商標権侵害物品に対する監視の目はかつてなく厳しくなっている印象です。今回は、ECサイト運営者が知っておくべき「商標権侵害」の基礎知識と、知的財産権保護の最前線で活動する「ユニオン・デ・ファブリカン」などの権利者団体の活動について、その要点を解説します。
そもそも「商標権」、「商標権侵害」とは何か?
まずは商標権侵害に関し、法律上の基本的な仕組みを理解しておく必要があります。
商標権とは「ブランドの信用を守る権利」
「商標」とは、自社の商品やサービスを、他社のものと区別するために使用する「ネーミング」や「マーク(ロゴ)」のことです。特許庁に出願し、登録されることで「商標権」という強力な独占権が発生します。
これは単に名前やマークを保護するだけでなく、そのマークに化体した「ブランドの信用」や「消費者の信頼」を守るための制度です。
商標権侵害となる要件
商標権侵害とは、原則として、権利者に無断で、登録された商標と「同一」または「類似」する商標を、「同一」または「類似」する商品・サービスに使用する行為を指します。
類似していればよいため、「全く同じ名前・ロゴ」を使わなければセーフだということにはなりません。消費者が「本物(あるいは関連商品)かもしれない」と混同するおそれがある程度に似ている場合でも、商標権侵害に該当します。
「ユニオン・デ・ファブリカン」の活動
このような商標権侵害を取り締まるため、権利者側の動きも活発化しています。その代表例がユニオン・デ・ファブリカンです。
ユニオン・デ・ファブリカンは、海外著名ブランドなどを会員とする権利者団体です。日本でも、関係省庁・取締機関に偽造品の流通に関わる情報を提供するなどして、「偽造品の排除」、「商標権侵害行為の防止」といった活動をしています。プラット・フォーム運営者へ会員権利者からの削除依頼を伝達する活動も行っています。
特に、著作権関係信頼性確認団体・商標権関係信頼性確認団体(「信頼性確認団体」)という、情報流通プラットフォーム対処法商標権関係ガイドラインに基づき著作権・商標権等に係る権利侵害情報に対し、ネットオークション事業者等が送信防止措置を迅速かつ適正に対応するために設けられた仕組みがあるところ、ユニオン・デ・ファブリカンはこの信頼性確認団体としての認定を受けています。かかる信頼性確認団体からの申出がガイドラインの要件を満たす場合、プラットフォーム運営者などは、速やかに必要な限度において削除等の措置を講ずる必要があるとされています。したがって、ユニオン・デ・ファブリカンからの通報を受けたプラットフォーム運営者は、迅速に該当ページの削除等を下すことになります。
「偽物だと知らなかった」では済まされないECサイト特有の罠
商標権侵害において非常に重要な注意点は、販売者自身に「偽物だ」「権利を侵害している」という認識がなくても、結果的に商標権を侵害していればアカウント停止や販売停止の対象となり得るということです。
例えば、以下のようなケースで突然の警告や削除措置を受ける事業者からの相談をしばしばいただきます。
正規の並行輸入品
日本国外の正規店で購入した本物であっても、日本国内では販売できない物品が存在します。
いくつか留意すべき点はありますが、代表的な留意点に関するものとして、「ダンロップ事件」があります。マレーシアから「ダンロップ」製品を並行輸入した事業者が、日本における「ダンロップ」の商標権者である住友ゴムから商標権侵害を理由に訴えられた事案があります。この事例では、マレーシアでの「ダンロップ」の商標権者が日本と異なっていたため、商標権侵害が認定されました。
したがって、輸入元の国における商標権者が日本国内における商標権者が同一でなければ、適法な並行輸入ができないことになります。
ハンドメイド品やリメイク品の販売
既存のブランド生地を使用したり、勝手にコラボレーションしたかのように見せかけたハンドメイド品やリメイク品を販売することも、商標権者の許諾がなければ商標権侵害となる可能性が高いです。
突然のアカウント停止が死活問題に直結する
ユニオン・デ・ファブリカンのような団体や商標権者からの通報によりプラットフォーム側が動いた場合、事前の警告なくいきなり出店が停止されることがあります。ECモールにおける売上が大きい事業者にとって、突然の出店停止は売上がゼロになり、資金繰りがショートする事態も想定されます。
さらに、悪質な商標権侵害と判断されれば、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事事件として警察の捜査が入る可能性すらあります。
確実なリスク管理と予防策の検討を
ビジネスにおいて、新たな仕入れルートを開拓したり、売れ筋商品を投入したりすることは重要ですが、「この商品は本当に商標権を侵害していないか」というリーガルチェックを怠ることで、企業にとって致命的なリスクに繋がることがあります。
プラットフォーム側は強大な裁量権を持っているため、単に「再開してください」と懇願しても応じてくれません。せっかく育て上げたECサイトのアカウントや自社の信用を失ってしまう前に、仕入れ段階での疑問や、万が一警告を受けてしまった際の初期対応については、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。貴社の安全なECビジネスの展開を、法律の専門家としてサポートいたします。