経営者の再婚 ~相続トラブルを避ける3つの方法〜

経営者が再婚する場合、よくあるお悩みが

  • 再婚相手が入籍をしたがらない
  • 自分の子(or再婚相手の子)が再婚に反対している
  • 自分の親(or再婚相手の親)が再婚に反対している

などです。

これらは、再婚して新しい家族が増えることで、将来の相続トラブルが心配されるために起こる問題です。

配偶者の法定相続分は2分の1ですから、経営者が先に亡くなれば、経営者の個人資産の半分が再婚相手に相続され、再婚相手の死亡後は、その親族に相続されることになります。自社株式、親から代々受け継いだ財産、死別した配偶者と協力して築いた財産などがある場合、特に周囲からの抵抗も大きくなりがちです。

そこで、事前に紛争を予防する手立てをしておくことが、今後の円満な家族関係を築くために重要なポイントとなります。

ここでは、①経営者が亡くなった後の再婚相手の生活を確保しつつ、②なるべく経営者の子に財産を残す方法についてお話ししたいと思います。

1.遺言書

例えば、すべての財産を子が相続する(あるいは現金・預貯金は再婚相手、不動産・株式は子が相続する)としておき、再婚相手に配偶者居住権を遺贈するとしておきます。こうすることで、不動産等の重要な財産の所有権は子に移転し、再婚相手も亡くなるまで自宅建物に住み続けることができます。

メリット:一人で決められる。
デメリット:再婚相手の権利が弱くなる。二次相続については決められない。

2.民事信託

信託銀行等が資産運用を行う商事信託とは異なり、個人の財産を守るという後見的な役割が重視されたものです。2007年に信託法が改正され利用されやすくなりましたが、まだ一般的には浸透していないようです。

民事信託とは、財産の所有者(委託者)が、信用する者(受託者)に財産を託し、指定した者(受益者)が財産から利益を得られるようにする制度です。例えば、所有している収益物件の管理を、信頼する甥(受託者)に任せ、賃料等の収入は妻(受益者)が受け取るようにしておく等です。所有権は受託者に移転しますが、相続税や贈与税などは受益者に課税されます。

遺言が死亡時の財産の行方を決めるものであるのに対し、信託は死後の財産についても一定程度決めることができます。そのため、直系の親族に財産を承継したい場合に適しています。また、受託者と受益者が区別されるため、高齢の配偶者や障がいをもつ子など、財産管理能力に不安のある家族の生活基盤を安定させたい場合にも有用です。

遺言によることも(遺言信託)、契約によることも(信託契約)できます。契約による場合も、信託の開始時期を委託者の死亡時とすることが可能です(遺言代用信託)。

例えば、経営者死亡後の受託者を経営者の子、受益者を再婚相手とし、再婚相手死亡後の受益者を経営者の子とすることで、経営者の子を所有者としつつ、再婚相手が亡くなるまで収入を保障することができます。再婚相手が死亡すれば、受託者も受益者も経営者の子になりますので、信託は1年で終了します(受託者=受益者となって1年後に終了するというルールがあります。子が複数いる場合等、受益者を複数人にしておけば継続します)。

あるいは、もっと先の受益者まで指定することも可能です。例えば、経営者死亡までは経営者→経営者死亡後は再婚相手→再婚相手死亡後は経営者の子→経営者の子死亡後は経営者の孫…とするものです(受益者連続型信託契約)。もっとも、永遠に続けることはできず、信託開始から30年経った後に受益者となった人が死亡した時点で信託終了となります。

メリット:二次相続以降についても決めることができる。
デメリット:受託者の協力が必須。

3.夫婦財産契約(婚前契約)

結婚前に、夫婦で財産に関する取決めをしておくものです。登記は必須ではありませんが、登記することで夫婦以外の人に対してもその内容を主張することができます(民法756条)。 英語ではプレナップ(Prenup)といい、海外セレブの離婚の際によく話題になります。離婚時の財産分与のために活用されるイメージが強いですが、相続についても決めておくことが可能です(一部有効性には争いがあります)。

法務省の統計によると、平成28年に登記された夫婦財産契約は全国で23件しかありません。しかし、特に再婚の場合、それまでに有していた財産を明確に区別するタイミングとしては結婚前がベストですから、将来の紛争予防のためにもっと利用されてもいいのではないかと個人的には思っています。なお、結婚後に夫婦間で契約をすることも可能ですが、夫婦間の契約は原則的にいつでも取消しが可能です(民法754条)。

例えば、再婚前から持っている財産(特有財産)を明記し、特有財産はそれぞれの子らが、再婚後に取得した財産(共有財産)は再婚相手が相続するとしておくとしておきます。そうすることで、入籍前に、財産目当ての再婚かもしれないという親族の疑念を晴らすことにもつながります。

メリット:登記ができる、確実性が高い。
デメリット:結婚後に変更できない、誰でも登記内容を閲覧できる。

これらは一部の例ですが、それぞれの制度を上手に活用することで、さまざまなニーズに対応することが可能です。周囲の理解を得るためには夫婦財産契約、事業承継のためには民事信託など、目的に応じて使い分けたり、併用したりしてもよいかもしれません。幸せな再婚生活の第一歩を踏み出すために、ご参考にしていただければ幸いです。

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